会誌-「ZARASU-2002 夏 -ルタン-」
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■ バルスの怪盗 【古河丞】 さあさあ、どうぞお立ち会い。 時は諸英伝のころ、独立暦じゃあ400年ぐらいかね。この乱世に、妖人の娘が、仲間を集めて1つの邑を創っちまった。その名はバルス。芸術を愛する人達とその芸術で一儲けを企む連中の邑だ。 今から数千年も前の昔話、聞きたい人はさあ寄っといで。 (各種方言、入り乱れてスミマセン) バルスの建邑が進む中、1人の天才的な怪盗が暗躍していた。その名は、怪盗ラパス。 ラパスは、わずか2節の問に3件の仕事に成功している。まずは、ある神殿の宝物庫の中に保管されていた古代地図。次に、トゥレン家の家宝のエメルタスの壷。さらに、何処かの遺跡から発掘された祭祀用の銅鏡と燭台。 そして、奴からの4件目の予告状が届いた。 「今晩、ザイトン家の家宝、女神の涙と称する青ダイヤを頂戴します。 ラパス」 バルスに仕えるガニマータ捜査官は、不遜な挑戦状を2つに裂いた。 「面白い、ならば、こちらも切り札を使ってやる。ラパスめ、今夜こそは必ず後悔の2文字をその 辞書に刻んでやる。楽しみに待っているがいい。フハハハ」 両腰に手を当て、高笑いをあげる中年ガニマータ。その余りの異様さに、唖然とする同僚や部下たちの視繰も全く気にならないようだ。 その日、ガニマータは、友人の歴史学者ナフタ=アズモスの私塾を訪ねた。ナフタは、かつて友人の話を聞くと、 「すると、貴方は人の都合を顧みず、盗賊1人のために私をこき使うつもりですか?」 「先生、そんな事言わないでください。悪いのはラパスです。」 ナフタに協力を求めるガニマータは、己の不利を悟りつつも、まだ退かない。 「かつて、先生はカノールで賢者と呼ばれていたじゃないですか。何とぞ、その知恵をお貸しください」 「それは昔のこと。今は一介の学者です」 「そうですよ!先生は暇じゃないんですから」 ナフタとその秘書のお断り口撃に対し、ガニマータは薄くなった髪を掻き回し、 「パルス邑立歌劇団、処女公演の特別ペア入場券、あげるけど?」 「是非やらせてください」 アイドルも歌劇も大好きなナフタ、頭を抱えている秘書を無視して、 「その代わり、万事、私の指図通りにお願いします」 その夜、ラパスは警備網を突破して、ザイトン家の青ダイヤを盗むのに成功した。しかし、 「あのガニマータがこんなザルな警備を敷くとは思えん。さては、俺をアジトに追い込むつもりか。面白い。その挑戦、乗ったぞ」 不敵な笑みを浮かべたラパスは、尾行に気づきながらも、3つのアジトの内1つに逃げ込んだ。 それを見届けたのは、1人のナーラダ族の戦士風の男。手にした槍を大きく3度回すと、ナフタとガニマータが現れる。 「さすがは元ライル社のエース、ゼオ=マキス君。ご苦労さん」 「夜勤手当て、ちゃんとくださいよ」 ぼやくマキス。だが、ガニマータは何も答えずに、 「ラパス、いることはわかってるんだ! 素直に出てこい!!」 と、扉を乱暴に叩く。 「やれやれ、おいでなさったか」 苦笑を浮かべたラパスは、何食わない顔で扉を開ける。そこから、遠慮なくずかずかと室内に入ったガニマータとマキスは、 「さっき盗んだ青ダイヤを出してもらおう。言っておくが、ザイトン家からここまでずっと尾行して来たんだ。さあ、おとなしく罪を認めろ」 と、頭ごなしに決めつけるガニマータに、 「僕がそんなことするわけないよ。疑うなら、家捜ししてもいいよ」 あくまでもしらを切るラパスの両手をマキスが縛る。 それから、ワンルームの部屋は箪笥の裏から絨毯の下まで調べられ、身体検査も行ったが、ダイヤは見つからない。と、そこへ、 「おや。貴方、鳥が好きなのですか?」 ナフタの問いに、笑って頷くラパス。 「どれどれ、手乗り文鳥に鳩にフクロウ。どういうセンスしてんだか」 と言いつつ、3つの鳥籠の中をくまなく探すが、やっぱり見つからない。じっと腕を組むガニマータだが、何か思いついた顔をして、 「さてはこいつ、飲み込んだな?」 そう言って、ラパスに下剤を飲ませようとするガニマータ。しかし、 「それは無駄ですよ。何、御心配なく、夜明けごろには見っかりますって。それまで、一服しながら待ちましょう」 笑いながら煙管に煙草をつめるナフタ。その表情を訝しげにながめる3人。 やがて、空が白むころ、カランと乾いた音が聞こえてきた。その時、隙をついて逃げようとしたラパスは、マキスに取り押さえられた。それを横目に、3つの鳥籠に近づくナフタ。その中の1つに手を入れ、 「今、フクロウ君が吐き出した青ダイヤにしか見えないこの石、一体何処で手に入れたのですか?」 この時、ラパスは、不敵な笑みを浮かべて、自分の負けを認めた。そして、 「今回はおとなしくしますが、近いうちにまたお目に掛かりましょう。では」 ナフタに一礼すると、不遜な怪盗はガニマータとマキスに引っ立てられて行った。 翌日の昼、ガニマータは約束の入場券を手に、ナフタの私塾を訪ねた。そこで、秘書にお茶を入れてもらい、しばらく待つと、ナフタが普段着のままで釆て、 「例のもの、さっさと下さい。そして、早々にお引き取りを。こちらは寝不足ですから」 言いつつ、大きなあくびをするナフタ。それを見たガニマータは、頭を掻きながら、 「その前に、1つだけ。何で青ダイヤの在り処がわかったんですか?」 「フクロウの習佐ですな。彼らは夜行性だから、真夜中でも餌を食べます。それに、彼らは餌を丸飲みにして、後で消化できない骨を吐き出すんです。彼の鳥たち、手入れが行き届いていたでしょう? あんなにかわいがっているなら、まさか鳥の腹を割くわけにはいきませんよ。まして、自分のお腹に飲み込むなど、切れ者のガニマータさんには通用しませんよ。ちなみに、これに近いのが、大蛇のお腹に隠す密輸の手口ですね。だけど、鳥を大事にする人は、猫や蛇を飼ったりしないんです。人は、戦争よりもペットの殺し合いの方が残虐と思いがちですから」 <次回予告> ぐうたら作者の大衆向けザラスミステリィシリーズ! 次回こそは面白いのを書きます。多分……。 というわけで、次回作は「未定」。石、投げないでね。 |
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