会誌-「サークル水月会誌 第7回」





■ (例)アピールシーン キャラクター名:カーン・リョウ   【作者:とむ】


 ここはレスフィーナ講学堂。その名のとおり、学ぶところ。ここには、レスフィーナに住む子供達が遊びに来る。初等部と中等部は義務教育だから、みんなが学びに来る。でも、働いている子供もいるから、人火の部(午前の部)と風空の部(午後の部)にわかれていて、どちらかで学べばいいの。
 でも、彼らの通う高等部は違うみたい。
「俺の名はカーン・リョウ。スィスニアから来た。親は漁師をしていて、とある都合でレスフィーナに引っ越してきたんだ。ま、一つよろしく頼むぜ!」
 このリョウと名乗るナーラダの男は、見た感じ凛々しさがちょっと格好いいお兄さん。多少ひいき目に見れば、美青年と言えないこともないかも。彼の自己紹介が終わると、教室にはやんややんやと拍手喝采が起こる。レスフィーナの人々はいつもこんな感じというか、お調子者でお祭り好きが多いんだよね。
 こんな風に、レスフィーナに住む人々が増えるにつれて、当然のように転校生(といっても、講学堂なんて初体験って人もいるけど)も続々とやってくる。彼もその一人だった。
「アムル・リルルと申します。料理とお裁縫が得意で、趣味でもあります。ふつつか者ですが、よろしくお願い申しあげます」
 そういって深々と丁寧に頭を下げるこの娘もナーラダ人。ま、レスフィーナはナーラダにあるんだから、ナーラダ人が多いのは当然かもね。でも、教室を見回してみると、それ以外にも神人とか妖人とか人間とかもちょっとずついる。中でも、商売の関係からかナルスが多くて、次がシャルかな。地理的に近いメールがそんなでもないのは、陸路でレスフィーナに来るのが大変な証拠だね。
 このお嬢さんは、そこはかとなく上品な振る舞い、はっきりした目鼻立ちとさらさらの髪で、早くも男子生徒の興味を集めてるみたい。これだから男の子ってやつは。そんなこんなで、二人は早くもレスフィーナ講学堂高等部の一員として受け入れられたのでした。ちゃんちゃん。
 ……っていうのだけではつまらないので、放課後。リョウとリルルは、実は幼なじみ。二人とも腐れ縁と称する間柄、今日も仲良く一緒に下校している。石畳を歩きながら、リョウが石を蹴飛ばすと、魚屋から一尾失敬しようとしていたネコに命中しました。哀れネコさん、今日の夕ごはんを食いそびれてしまったみたい。
「ちょっと、可哀想じゃない」
 リルルちゃんは、そういって非難がましい目でリョウくんを睨んでいる。
「いや、ネコであろうと泥棒は許されん。それが正義というものだ。しかも、狙っているのが魚屋だというのが気に食わん」
 う〜ん、そういえばリョウくんのお父さんは漁師だったね。どんな人かというと、ふんどし一つで荒れ狂うセルファニア湖を、自分の庭のごとく縦横無尽するイカスおやじ。
「それよりも何だ、今日のお前の自己紹介は。猫かぶりやがって」
「ふーんだ。本当にお嬢様なんだから、お嬢様らしく振る舞うべきだと思いませんこと?ヲホホホホ」
 リルルは手の甲を口に当てて笑い声を言う。それじゃ全然お嬢様らしくないよ。よく言って悪の秘密結社の女幹部って感じ。
 ちなみに、リルルのお父さんは昇竜会でも名うての大商人。こちらは至極まともな人で、人当たりの良いナイスミドルといえるかな。結婚しているにもかかわらず、部下の女性からは人気があるんで、浮気しないか奥さんちょっと心配みたい。でも、娘のことを猫可愛がりしていてめろめろになっちゃうんで、リルルの前だと普段の格好良さはどこへやら。
「ま、頑張ってお嬢様してても、そのうち化けの皮がはがれることは目に見えてるけどな。せいぜい努力しな」
「あんたも協力しなさいよ」
「へいへい」
 この二人が幼なじみなのは、お父さん同士が仕事の取引相手で、かつ親友なんで家族ぐるみのお付き合いをしていて、そのせい。だから、レスフィーナに引っ越してきたのも一緒なわけ。
「ところで、あんたはおじさんの仕事、継ぐの?」
 わたしがお父さんの話をしているせいか、リルルちゃんも気になりだしたみたい。
「いや。確かに漁師もいいが、俺はもっとでっかくなりたい」
「でっかくって、どういうこと?」
「つまり、ナーラダの王だ」
 リルルはあきれ顔で、リョウの顔をのぞき込んだ。
「頭、大丈夫? それ、本気で言ってるの?」
「俺はいたってマジだ」
「ヴィレクやリューンと、張り合おうっていうの?」
「そうだ」
 リルルはため息をついた。うん、気持ち分かるよ。
「現実ってものを見なさい、現実を。ヴィレクやリューンみたいなこと、あんたにできるわけないじゃない」
「奴らのまねをするつもりはない。俺は俺のやり方で覇をとなえる。……それに、夢はでっかい方が、漢だぁ〜って感じ、するじゃないか」
「……ま、あんたらしいと言えばあんたらしいわね。それで、具体的には、今後どうするわけ?」
「まず早いとこ一人前にならないとな。それと、いい女を見つけて嫁にすること!」
 リルルはそれを聞いて目を丸くした。
「よ、嫁って、それとナーラダ王になることがどう関係あるのよ!?」
「わっかんないかなあ。いい女に惚れられるということは、偉大な男の証じゃないか」
 リルルはさらに長いため息をついた。
「ま、ナーラダ王になった暁には、私にもおこぼれにあずからせてちょうだい」
「ああ、いいとも、指切りしよう」
 そんな二人にとって、今日も平穏な一日だったとさ。今度はホントにちゃんちゃん。

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