会誌-「サークル水月会誌 第7回」
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■ DEATH DUEL 【作者:元宵】 壱:ガリクソンさん(46)一家のとある日常 ミュール付近の農場。 「今日もミルドベーク山が夕日に映えて真っ赤やなぁ」 ガリクソンさん(46)はそう呟いた。 弐:死を望む男 独立暦401年風の月インダラの日。 髪の短い道士、クラウ・ハデンの瞳に光は無かった。 ここはミュール河の北方にあるワウル平原。彼はそこにある一本の大きな木の上で遠くを眺めていた。 「来た来た……」 彼の視線の先には武装した男たちが次々姿を見せていた。一見してまっとうな者達でないことがわかる。 「待っていたよ……僕を殺しにきたんだね……」 彼は木の上から降りると立て掛けてあったある物を手に取った。それは、全長170糎、真っ白な布に包まれベルトで縛り付けられている、杖のようなもの。 「さあ、行こうかナタケ……」 ベルトの一つを外すと他のベルトもバチバチと音を立てて外れ覆っていた布が地に落ちた。全金属性の杖がそこにあった。 ライル・ナタケが創ったハデン専用の武器、『 やがて、30人程の男達が彼を取り囲んだ。 「久し振りだなぁ、『 「ティファ、もたもたすんな、急げ!」 「そんなこと言ったって……ハクユウさん……」 そのころナーズ・ハクユウとアデル・ティファもワウル平原を目指していた。勿論、ハデンの首が目的ではない。 「ちくしょう、なんだってこんな時に寝坊なんかするんだ、オレサマは!早くせなハデンの大バカヤロウが死んじまうかも知れねぇってのに!あいつは間違いなく死ぬつもりなんだ!オレが止めてやらなきゃどうしようもねぇ!」 彼の手に握られた広告にはこう書かれてあった。 『オレを殺したい奴は風の月インダラの日にミュール北方ワウル平原に何人掛かりでもいいから来い。 クラウ・ハデン』 この布告がそのスジの者達の間に行き渡るのにさほど時間はかからなかった。 参:白い光の氾濫 「烈波!」 ハデンは覇杖を横に振った。衝撃波が扇状にひろがり十数人を吹き飛ばした。 もう既に彼の周りには五、六十人の死骸がある。だが尚も続々と10万粒を狙う者、彼に恨みを持つ者が集まっていた。ただ、彼等は連携を欠いている。そのためハデンは数があるとはいえ無秩序に掛かってくる敵を薙ぎ払うだけでよかった。精神力は『気輪』と呼ばれる宝器により常に補充されている。これは体への負担を全く顧みない無茶な闘い方であったが死闘の果てに死ぬつもりの彼にとってはどうでもよい。 「六星光弾、並びに……」 右手から六つの気弾、左手の覇杖からおおきな光弾を撃つ。 「おわぁっ!」 相手は技量にかなりばらつきがあるがなかにはかなり出来る奴もいる。身を翻して光弾を回避。 「連術の後は一瞬撃てないだろうっ!」 一歩前に踏み出した刹那、後方で躱した光弾が弾けいくつもの光条が飛び出した。そして背中を蜂の巣にする……。 「残念だったな、この『 彼等は信じられない物を見た。ハデンの覇杖から六つの気弾、無数の散気弾がほぼ同時に放たれ刹那の間を置き炎の龍を発現させた。 「来たれ炎龍!」 さらに多くが死者の列に加わる。 「一応片手だけで三つまでなら重ねることはできる。オレが術だけで勝ち続けた理由だ」 赤い夕日を背に淡い笑みを浮かべるハデンは悪魔に見えた。 「バラバラに掛かってもだめだ!今だけは連携するぞ!」 再び新手がハデンを取り囲む。今度は統制された動き。闘い慣れた彼等はやろうと思えばそれなりに的確な判断ができるのだ。 「そうそう……そうやって愉しませてくれ」 ハデンは覇杖を左の脇に抱え右手を前にそえて固定した。 「覇杖、第二形態」 先端上部のパーツが次々と外れ、その下に小さな赤く光る石がびっしり並んでいる。 「ファランクス!」 小さな石から無数の光条。真っ白な光が視界を支配する。 一瞬で二十数名が永劫の闇に眠る。 「おい、こいつ……」 十数名の男達がハクユウ達を取り囲んでいる。 「ナーズ・ハクユウ!『 ハクユウはティファをかばうように構えた。 「そこをどけ。オレサマはハデンのバカを助けに行くんだ!」 「そうはいかねぇ。こいつはまたとないチャンスだ。名立たる賞金首がワウル一帯に集まってる。狩る方にも賞金をかける奴がいる。つまり、ここで儲けるチャンスはいくらでもある」 そこまで聞いてハクユウはため息をついた。 「……気に入らねぇな」 「何?」 「おめーらの前にいるのが誰なのかまるでわかってねぇ。そいつの恐ろしさをなァ」 「……はぁ?」 「だがもっと気に入らねぇことがある。それは……」 ハクユウの全身から凄まじい剣気が出る。 「オレサマにかかってる賞金は何でハデンの半分なんだぁ〜〜ッッ!?オレサマはあいつより弱いっていうのかァッ!?ムカつくぜ────ッッ!!」 抜刀すると同時に気の刃を放った。吹き飛ばされた数人がハデに天高く舞う。 「どわぁ〜〜〜〜!!」 「おらおらおらおらおらおらおら────ッッ!!」 気合いとは裏腹にデカイ刀『 だが次の瞬間。 「 ティファには剣閃が全く見えなかった。ハクユウの身のこなしも「見えている」とは認識できなかったかもしれない。 疾すぎた。 刹那の後、立っていたのはハクユウとティファの二人だけだった。 「 みんな気絶してて誰も聞いてないって。 「……でもハクユウさん、『六連』って言ってましたけどさっき倒れたの9人ですよ。それに、峰打ちの割にはそこのひと、血がどばどばと……」 ティファのつっこみはクールで鋭かった。 肆:真波動 覇杖は局面と主の意志に応じ姿と能力を変える。 『ファランクス』を発動したハデンは息もつかせぬ猛攻を加えた。元々、彼の 「こ……この化物めッ……!」 「そのテのセリフは聞き飽きたな」 だが彼も肩で息をし始めている。何人殺したかは分からない。138人目から面倒臭くなって数えるのをやめた。既に満身創痍である。 「……ハァ……フゥ……ハァ……グゥッッ……!」 左胸のあたりに激痛が走った。 (もうすぐだ……もうすぐだよ……少しだけ待っていてくれ、ナタケ……) 再び激痛。思わず覇杖を地に落とした。 (いかん!) ここぞとばかりに一斉攻撃を受ける。すかさず後ろに跳び回避。だが覇杖は手元に無い。 (潮時か……) じりじりと追い詰められる。 「破!」 気弾を放つ。二人を吹き飛ばす。 「我ながら情けない破壊力だ……」 血を、吐いた。目が眩む。 (限界を無視したひずみが一気に来たか……) ゆっくりと左手を前に掲げた。 「覇杖、第三形態……」 地に横たわる唯一の味方がカタカタと音を立てて震え、そして宙に飛び吸い込まれるかのようにハデンの左手に納まった。 そして。 全金属性の杖はドロリと溶け、一部に原型を留めたままハデンの腕に絡み付く。薄い光を放っている。徐々に変貌を遂げるハデンの左腕。 異形を遂げた時、彼の腕は覇杖と融合していた。拳ぐらいの大きさの「 「……『真波動』……出力100%……!」 圧倒的な力は対峙する者に恐怖を与える。ハデンの前に立つ者達も例外ではなかった。 「お……おい、やばいぞこれは……」 凄まじい 狙点を定める必要は無かった。撃つ方向の何もかもが消し飛ぶのだ。いや、撃つ瞬間、つまり限界まで溜めた気を解放した瞬間周囲の物は何も無くなる。 「終わりだ……」 黒いヴェールが掛かりつつある視界の端に逃げ出す男たちの姿が映った。 無になった。白一色の世界。音は無い。 次の瞬間。 光の波濤が突き抜けて全てを薙ぎ払った。 伍:壊れた心 ああ……疲れたな…… …… ナタケか? そう悲しそうな顔をするな。オレにも少し休ませろ。 ……何で一人で先に行ったんだ……寂しがり屋の泣き虫なくせして…… いや、オレにも責はある……だから…… おかしいな……どこかで道を間違えたとでもいうのか……ずっと最良の選択 をしてきた筈なのに…… ………僕は…………もう……………………疲れた……………… 頬を伝わる一筋の涙。 左腕、そして楽しかった日々が音も無く崩れていった―――― ――――!!! 「伏せろティファァアアアッッッ!!」 突然ハクユウがティファ上に覆い被さった。 三秒後、ブ厚い光の束が地響きと暴風を従え虚空を支配する。 「キャアアアアアッッッッ!!」 「な、何なんだこりゃあっっ!!」 「ハ、ハクユウさん、アレッッ……!」 ティファが指差す先には山頂を粉砕されたミルドベーク山。 「ハデン……てめぇは一体何なんだ……どうなってやがるんだ……ハデン…… ハデェェェェェェェンッッッッ!!!! 「……ねぇ、キミ、どうしたの?」 「……」 「うわ……ちょっと、すごいケガじゃない! 大丈夫!?」 「……」 「……生きてる……よね?」 「…………ア…………ウ……ウゥ…………」 ―続く― |
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