会誌-「サークル水月会誌 第6回」

■ リアクション6−2  (独立暦401年人の月)


 ウリクル邑は小さい。小さいながらにまとまった良い邑だ。しかし、ウィルドに立ち向かうにはやはり小さすぎる。他邑との同盟が不可欠だ。
「私はレディアとの同盟を提案したいと思う」
「理由は?」
 ウリクル・ラマジャが問うた。
「どうやらラヴェドはウィルドと手を組むらしい。向こうには大邑がついた以上、もうあちらと手を組むことはない。それだけ存在意義が薄れるからな」
 ヴァル=ヴァロヌは当然だろうと言わんばかりの顔をする。まあ、そうだな、とラマジャは頷く。
「しかし座視するという考え方もあるが?」
「普通はそうだろうな。私でもそうする。だが、ここにひとつの情報がある。レディア王ツァン・スィラーナはきわめて好戦的な人間だ、というな。交渉次第ではこちらにつく可能性は大だ」

 ウリクル邑の使者を迎えたスィラーナは、二つ返事で「行く」と言った。ティドゥアが止める間もなかった。
 すぐに軍をまとめて出る。その先頭にはスィラーナが馬を立てていた。ティドゥアは嘆息した。
 すぐに戦が起こるわけでもあるまいに。その間、どこでどうやって糧食を手に入れるっていうんだ。

 レディア軍の出兵に伴って、先の六邑も兵を出すことになった。しかしホーズ側の監視もまだ必要であるから、クティスとティエラは居残りである。
「せっかく大きな戦いがあるのに……」
 リーフ・ディールは残念がった。
「行ってきてもいいんだぞ?」
 クティスは言った。
「現にバス司祭の部下のアシュヴィンなどは、ウィルドに潜入するそうだし……」
「いえ、いいです」
 ディールはあわてて否定した。ディールはクティスの戦う姿を見たいのであって、他の神官たちと行ってもあまり意味がない。
「ま、こっちでも戦いがないとも限らないからな。戦いにはいい季節になってきたし……」

 クティスの言葉がにわかに現実味をおびてきたのは、それから数日後のことだった。先のホーズの将軍であったイーナは、ティドゥアの矢の他に数カ所の重傷を負っており、療養中であったが、もうそろそろ体力も回復したらしく、監禁してあった室の窓をやぶって脱走したらしい。
「ホーズの残党が、動き始めるかな」
 クティスは考え込んだ。
「そうですね。あの三千五百のうち千ぐらいは逃走して行方がわかりませんし……あのとき負傷してて戦えなかったのも治ってるはずだし……」
 ディールは小躍りして言う。
「うん、少し探らせてみるか……」
「あれ、居場所、分かってるんですか?」
「大体見当はついてる」
「さすがですね」
 ディールは眩しそうにクティスを見る。
「あの戦いから、だてにうろついてたわけじゃないからな。こういう地道な活動が、戦場では意外と役に立ったりするもん──」
 ふいに言葉がとぎれた。額をおさえている。
「どうかしたんですか?」
「──いや、何でもない」
 ディールに笑いかけると、クティスは自室へ退()がっていった。

 寐に倒れこむ。
 頭痛がした。額を掴んで呻く。
 ……少し、無理をしすぎたかもしれない。
 最近悪い夢ばかり見る。熟睡できない。眠い。夢魔に祟られているのだろうか。まさか、ホーズの残党の仕業でもないだろうが。
 まだ夕方だが、寝てしまおう。不眠症の療養のためだ……
「司祭!」
 神官の一人が走り込んできた。寐上にいるクティスを見て、首をかしげる。
「……具合でも、お悪いのですか?」
「報告内容によるな。……何だ」
「ニンラー・イーナが……動き出しました!」
 クティスはがばと寐からおりた。
「で? 行動の予測は」
「ホーズに向かっています。おそらくは、ホーズ攻略が目的かと」
「……そうだろうな」
 外衣を脱ぎ捨て、鎧甲に着かえる。
「バス司祭はどこにいる?」
「すでに出陣されています。偵察と言いながら」
「……あいかわらず、早いな」

 カーク・アシュヴィンは、ウィルドの募兵隊の中にいた。
 刺すような鋭い視線の存在をいくつも感じながら、大きく伸びをする。
 自ら望んだこととはいえ、さすがに少々肩がこった。彼はティエラと大喧嘩をしてレディア同盟軍から抜け出した──ことになっている。見え透いた芝居であり、彼の異相──トゥーの髪にツァンの肌、左右で異なる瞳の色──も、あからさまに怪しさを演出している。だからウィルドの疑いの目はアシュヴィン一人にひきつけられ、レディアの他の間者への配慮がおろそかになるだろう、というのが彼の考えだった。
 長身の彼が、ほいほいとよく動くおかげで、ウィルドの間たちは完全にこちらの思うつぼだった。今も少なくとも五、六人の間者がアシュヴィンの挙動を監視している。気づかぬふりをして、彼は先輩の募兵からウィルドの地形について聞き出していた。しっかり、頭に叩き込んでおく。どうせ重要な機密までは知らぬだろうが、中枢の人間の性格や人間関係などを知っておければ、無駄にはならぬ筈だ。

(成程な、レディアも動き出したのか)
 ウリクル邑の間が、その様子を眺めていた。
 彼の任は、ウィルド邑宰丞に就任祝いの反物を届けることであった。それをどう使うつもりなのかは、彼には知らされていない。いぶかしげな顔をしつつも、クロトワ邸の門番は反物を受け取っていた。その後は募兵に紛れ込んでいる。
 ヴァル=ヴァロヌとウィルド邑の高官が内通している、という噂が流れ始めたのは、それからまもなくのことだった。するとあの反物は、じつは連絡のための書簡であったのかと、その頃になってようやく気づいた。
 それすらもヴァル=ヴァロヌの計の一環であったことを、彼は知る由もない。
 まもなく彼はウィルドの衛兵に捕縛された。
「わたしがウリクル邑と組んでいるなどという無責任な噂を流したのはおまえか」
と言うところをみると、どうやらこの男がウィルド邑宰丞クロトワその人のようだった。間は覚悟をきめた。
「巷間で流れている噂では、この邑の高官というだけで、名を出してはいなかった。それでも俺を捕らえるとは、心当たりがあるということなのか?」
 彼は確信していた。内通の事実を隠すために、クロトワは間ひとりを犠牲にして、策を達しようとしているのだと。
「だったら、ウリクル邑宰にお伝え願いたい。この命はあなたに捧げます、と。ウリクル・カルタス様が、ウィルドの新たな主とならんことを……!」
 言うなり、彼はひとことナタの神語を唱えた。彼の身体が痙攣し、取り押さえていた兵が慌てて引き起こしたときには、男はもう死んでいた。
「何を言っているのだ、この男は」
 クロトワは首をかしげた。送られてきた反物の中から、ナーガの神語で書かれた内通書が出てきた。ウリクルの手の者が自分を陥れようとしているに違いない、そう思ったから捕らえたまでで、本当に心当たりはないのだ。だから勝手に何やらほざいて勝手に死んだな、と思っただけだったが、兵や側近たちにとってはそうではなかった。
 彼らはこの男の真剣な眼差しを見た。この男の潔い死に様を見た。クロトワは何もなかったかのように振る舞っているが、実際の所はウリクルに通じているに違いない、と彼らは固く信じたのだ。
 策は成った。上層の人間で、挙兵前よりクロトワと主に行動していた者たちはそんな噂は歯牙にもかけず、くだらない、と一笑に付していたが、宋でない者たちの間には、「クロトワ内通す」の報が、間の死に様と共に、広く流布しつつあった。
[マスターよりお詫び・と、盛り上げといて何ですが、戦、書けませんでした。誰か書いてね]

 ホーズ旧邑宰軍八百。対しタイテの兵四百にバス百六十。数的には、こちらの方が少ないが、あちらは将はニンラー・イーナひとり、こちらはクティスにティエラと、レディア同盟邑きっての名指揮官が揃っている。
「やあ、クティス司祭、遅いぞ」
 ティエラは笑った。すでにホーズの陣が視界の中にある。
「ティエラ司祭が早すぎるのだ。もう夜ではないか」
 クティスはやや憮然とする。機嫌が悪い。珍しい、とディールはまじまじとクティスを見た。その視線に気づいて、笑顔をつくる。
「旧ホーズ軍の動きは」
「動きはない。今のところはな。朝になって日が昇ってから動き出す気だろう。……しかし(まず)い用兵だな。あんな野っ原の真ん中に。少しは隠れようとか山を背にしようとかそういうことは考えんのかね」
「数を(たの)んでいるのだろう。あれが罠だ、という可能性は?」
「そう思って調べさせたんだが、全くなし。さて、クティス司祭ならどう攻める?」
「そうだな」
 クティスは一呼吸して言った。
「挟撃する。こちらは将が二人、あちらはひとり。各個撃破の危険を考慮しても、その方がよいだろう。正確に言うと分散を狙うべきだな」
「両方向から攻撃をかけ、引きつけつつ退いて陣を裂く、か。……悪いが、我が軍は序盤ではほとんど戦えんぞ。数の差がありすぎる」
「分かっている。……では、早朝、日の出とともに。我が軍は右から行く」
「わかった。神王アシュラの加護があらんことを」
「そっちこそな」

 そして、夜が明ける。日の出とともに、旧ホーズ軍の両翼へ、両軍は一糸乱れず襲いかかった。ホーズは最初は勢いに押されかけたが、すぐに反撃に転ずる。クティスとティエラは、すみやかに軍を後退させた。ここでティエラの軍に攻撃を集中されたらひとたまりもないところだが、将が一人しかいないゆえの不自由さ、旧ホーズ軍はほぼ半分ずつに分断された。とみた瞬間、また矛先をそろえて攻撃にかかる。
「さすがですね、クティス司祭!」
 リーフ・ディールは息をはずませて剣をふるう。
「ディールこそ、ずいぶん剣さばきがうまくなった」
 と言いながら、ディールの背後の敵を剣の一閃で斬り払う。
「俺は最前の方へ向かう。ディールはこの辺で適当に戦っていろ。無茶はするなよ」
「分かりました」
 馬がある分、彼は他の者より目立つ。攻撃が集中されやすくなる──が、たくみにそれをかいくぐって、彼は旧ホーズ軍のただ中に躍り込もうとしていた。できうるならこのまま中核まで行き、敵将ニンラー・イーナを倒す。ティエラにはそれは望めない。五対二の兵数差では、さすがに無理だろう。
 そう思いながら馬を駆っていると、ふいにひとすじの光が通り抜けたような気がした。
「……!?」
 目の前が揺れた。陽炎のように──いや、水の中にいるかのように。ゆらりと光がゆれる。息が詰まった。苦しい。咽をおさえ、無理に息を吸い込もうとすればするほど、気管は締めつけられ空気を拒む。それ以外の七感は瞬時にして消失し、皮膚を伝う水の感触と、肺が水に冒される錯覚が、彼の意識の全てを支配した。
「う……ぐ…っ」
 声が出ない。息ができない……水。水、が……
 無意識のうちにも馬の背に突っ伏し、戦場を離脱しようとする。タイテ兵たちは何が起こったのか分からず呆然とし、あるいは自分の戦いに必死であり、追いかけようとした者も阻まれた。リーフ・ディールが気づいた時には、もうクティスの姿は見えなかった。

 強く地面に叩きつけられる感覚があったが、まるで他人のもののように実感がなかった。ひどいめまいと吐き気がする。起き上がりたくない。起き上がることができない。
 一体、何が起こったのか──考えたくもなかった。怖い。理由もなく、考えるのが怖かった。このまま、死んでしまえばいい。そうすれば、考えなくて済む。
「そのまま死ね!」
 振り下ろされた剣を避けようともしなかった。その言葉もその剣も、知覚されていなかった。だが首筋を狙った剣は大きくそれて、肩口から胸の前を大きく(えぐ)った。
「クティス司祭!」
 その声と鮮やかな痛みが、クティスの意識を引き戻した。剣を抜いて身体を半転させ、目の前の男の焼けただれた右手を斬り落とす。
「ディール……無茶をするな……!」
 数十人もいる敵に一人で立ち向かおうとしている少女の姿。クティスは反射的に立ち上がった。鮮血が散る。自分の血と、敵兵の血と。そして炎の赤。
「クティス司祭……やめてください! ご自分の治療を先に…」
「そんな暇があるか!」
 呶鳴りつけ……一瞬、身体をびく、と震わせる。動けるはずがないのに──なのに、次の瞬間には、剣を滑らせている。斬り裂き、薙ぎ払いながら、高らかにアシュラの神語をつむぐ。
「火炎城にいます我が神王……炎の闘神、天を裂き地を制する者…黄金の炎よ……我に力を!」
 赤い熱気が、クティスの周囲を取り巻く。轟音をたてながら変則的に光を放つ炎に包まれた彼は、ディールには神の彫像のように見えた。掌上には炎の塊が浮く。輻射熱が、彼女の顔をあぶった。
「ディール、護符に祈れ!」
 はっと気づいて、懐のものを掴む。とたん、周囲の全方向へ向けて光が走った。火炎が土を焦がし、風を焦がし、敵兵とそして樹木を残さず黒焦げにする。その中でディールは一人だけ無事だった。炎が、彼女を避けて通ったようだった。凄い──すさまじい威力だ。今のディールにはとてもとても出せない。
「司祭……!」
 ディールは駆け寄った。焦げた樹木に背をもたせて座り込んでいる。顔は俯いていて、そして、身動きひとつしない。ディールは司祭の胸に手をかざし、神語を唱えようとする。その腕を、そっと掴まれた。
「司祭……」
「……無駄なことは、やめたほうがいい」
「でも……」
「……いつか、こういう馬鹿馬鹿しい死に方をするんじゃないかと、思っていたよ……」
 胸の服地をきゅっと掴み、そしてしたたり落ちる赤い滴を見てくっくっと(わら)う。
「何故だろうな……こうやって色がついてれば全く平気なのに……幻影でさえ…俺は…」
「治させてください」
 手を振り払って、掌を傷の上におく。力を失った腕が、草の灰の上に落ちた。
「俺は、証明したかったんだ。自分が無力な存在ではないってことを。だから、がむしゃらに剣と術の修行をした。兵法も修めた。……だけど、それはやっぱり無駄だったな…」
「そんなことはありません!」
 ディールは激しく頭をふった。
「クティス司祭は充分強いです……私、クティス司祭に会ってからずっと、司祭みたいになりたいって思ってました。司祭みたいに、優しくて強い人間になりたいって……」
 ディールの力で、少し傷は小さくなっている。しかし、失血が多すぎた。
「司祭……!」
 必死に、神語を唱える。何度も何度も──
「……そんなに、俺に生きていて欲しいのか」
 クティスが呟いたような気がして、ディールはその顔をのぞきこんだ。
「傷を負ったとき、これで死ねる、と思った。やっと死ねる、と……苦しくなくなる、って。俺……死んじゃ、いけないのかな……」
 瞼は閉じている。だがディールには声が聞こえた。ディールは手を拾って握りしめた。……冷たい。汗でじっとりと濡れている。呼吸も止まっていた。なのに声は聞こえる。
「戦う者にしか勝利は得られない。逃げる者は自らを貶めるのみ。戦う者は、たとえ負けたとしても、戦ったというそのことだけで価値があるのだ──『闘神経』第五章です」
 ディールは言った。
 少し間があった。
「……そうだな。君の言う通りだ」
 苦笑ぎみの声がした。
「君に渡した護符を、俺の首にかけてくれないか。もう手遅れかもしれないが、やってみる価値はある」
 言われて気づいた。声は護符から聞こえてくる。
「はい」
 ディールは護符の紐をほどき、首にまわした。胸にかかった護符の、紋の辺りが赤く発光し始める。それは次第に明るくなり、クティスの身体に吸い込まれていった。
 ふいに激しく咳こむ。身体が揺れ……前に手をついた。
「大丈夫ですか?」
 とっさに支えたディールは、クティスがきれぎれに神語をつぶやく声を聞いた。今度は間違いなく、声として発された声だ。
「我が、神王…………黄金の炎……我が…を………」
 パシッ、と乾いた音がして、護符が砕けて散った。ディールは思い出した。レディア司祭は、クティスはまだ生きているか、とディールに訊いたのだ。おそらく、このことを見越していたに違いない。
「クティス司祭……」
「……大丈夫だ。……少し、回復したから」
 苦しげな息づかいだが、少なくとも先刻のような寂しそうな顔はしていなかった。
「心配かけてすまなかったな、ディール。……大丈夫、少し混乱してただけだ。傷も、ちゃんと塞いだから……少なくとも、死ぬことはない……」
「よかった……」
「だから……少し、(やす)んでいいか? さすがに、ダメージが…大きくて……」
「寝るのは帰ってからにすべきだな」
 背後から女の声がした。バス司祭が立っていた。返り血を浴びて、彼女の戦布も赤黒く染まっていた。

「申し訳ない」
 いきなり謝られて、クティスは面食らったような顔をした。
 あれから五日経ったが、クティスはまだ寐上にいる。どうやら大量の失血をみ、気を使いきり、一度離れた魂を無理に引き戻したうえに護符の力の最大効力を一気に体の中に入れたため、いろいろ術的に不整合な状態にあるらしい。素人でもわかるところでは、とりあえず体温調節がうまくゆかず、日によって高熱だったり異常に低体温だったりする。
「何がだ、ティエラ?」
 頬が赤い。瞳の色が充血によらず赤く濁っている。呼吸が速く、表情がややぼうっとしていた。
「レディア司祭に聞いてたのに、何の配慮もしなかった。おかげでみすみす死なせるところだった」
「ティエラの責ではない」
 クティスは大きく息をついた。
「……俺が、弱かった。少なくともディールの前で、あんなところを見せるべきじゃなかった。あの子は俺に理想を見ていたんだ。……俺は、理想の神官像を演じていたかった。それが、俺自身も変えてくれることを期待した……」
 右の手で額をぬぐう。
「……ディールは、幻滅しているんじゃないかな」
「そんなことはないよ」
 ティエラは笑った。
「あの子は分かってるよ。クティスがほんとうに強いってことをね。強さってのは、ただ押しが強いことじゃない。弱さも受け入れて、そのうえですべてに立ち向かっていけることを強いって言うんだ。そういう意味では、私はクティスには絶対かなわない」
 そうか、とクティスは頷いた。
 熱にうなされて見た夢に、子供の頃、溺れたときのことが出てきた。苦しくて苦しくて……ただそれだけが理由だと思っていたが、そうではなかった。
 女の子がいた。自分よりもずっと小さな女の子。……妹、だった。名前は覚えていない。それくらい小さかった頃だ。
 大切に思っていた。自分が守る、と思っていた。だが、守れなかったのだ。水に飲み込まれ──自分ひとり、助かってしまった。
 水か怖かった……と同時に、もう一度溺れれば妹を助けられるような気がしていた。そして二度、三度と溺れ……苦しみだけが残った。
 だが……それは恥ずべき事ではない。苦しみを知っていれば、その分だけ人に優しくできる。人に苦しみを与えることに敏感になれる。
 ひょっとして、俺はもっともアシュラ神官に相応しくない人間なのではないだろうか、とぼんやり思いながら、クティスは再び眠りに落ちた。

 冴えない終わり方だなあ……というか、俺パワー爆発って感じっすね。すいません。趣味に走ってます。ウィルド攻防をメインにすべきかとも思ったのですが、ウィルドの人たちのことがいまいち私自身分かってないので。誰かやってくれい。

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