会誌-「サークル水月会誌 第6回」

■ 『闇師』ハウザー  【書く人:元宵】


「君ら、しつこいよ」
 夜の森の中でハウザー・カッシュは5人の男と対峙していた。
「私はとっくに『三振り太刀』とは縁を切ったつもりなんだけどね」
「貴様がそのつもりでも我らにとってはそうではない。勝手に抜けた者は抹殺する」
「やれやれ……自由退職もできないのかい」
 この時、目前の男達は4人に減っていた。カッシュの背後に音も無く消えたひとりの男が飛び掛かっていた。
「……遅いね」
 向きを変えずに腰の細身の剣の柄に手を掛ける。一瞬だった。
 鮮血の霧が舞い、ズタズタに切り刻まれた死体が地に転がった。
「……裏斬(うらぎり)……」
 口元に淡い笑みを浮かべている。
「きっ貴様、『長剣』クラスの分際でやりやがったな!」
 4人が一斉に地を蹴った。
「……まだわからないのかい、私が昔からずっと猫を被っていたことに」
 カッシュの左手が一閃する。ひとりの男の眉間に何かがつきささり、そして全身を火に巻いた。
「なっ……!?」
「よそ見、よそ見」
 黒い一陣の風が吹き抜ける。後に残ったのは総計5体の死骸と薄笑いを浮かべているひとりの男の姿だった。
「やれやれ、『闇師』ハウザーの実力を軽視しすぎたようだね。私はザコとは違うのだよ、ザコとは。つくづく身のほど知らずな連中だなぁ……君もそう思うだろ、ハデン君?」
「ちっ、バレていたか……」
 苦笑しながらナーラダ族の男が暗闇から姿を現した。
「気配を消して近付くクセはやめたらどうだい?悪趣味だね」
「人のこと言えんだろう。しかしお前、以前からこういう連中と戦っていたのか?」
 その問いにカッシュは薄笑いでかえした。いい性格をしている。
「カッシュ、お前が『三振り太刀』と関わりがあったとは知らなかったな」
「昔の話だよ」
「ではラーシャと言う道士を知っているか?賞金稼ぎをやっていた時、一度戦ったことがあるのだが」
「へえ、『名剣』と闘っていたのかい。あ、そうそう、ナタケ様にちゃんと会った?」
「ああ……ウォウルに行くつもりらしい」
 ハデンは少し目をそらした。左手で漆黒の髪をかきあげる動作をしながら呟く。
「ああまでして平和を求めるのもどうかと思わないでもないがな……」
「君は戦いたいらしいね」
 カッシュの一言はハデンに奇妙な衝撃を与えたようであった。発言の主がそのことを認識していたかどうかは窺い知ることはできない。ハウザー・カッシュは表面上は表情に富む男だが、そうすることによって本心を隠すタイプらしい。
「さあて……」
 こちらはポーカーフェイスで本心を見せない。相手がカッシュでも、そうしている。
「そんなことはさて置き、ハデン君、また一緒にやろうか」
 二人は目を見合わせ、そして意味ありげな笑いを浮かべた。これから何をするか、話し合うまでもなく決まっているらしい。
「ああ。謀略家は謀略家らしく、正々堂々後ろから斬り掛かるか」
 二人はまた笑い、そして闇の中へ歩き出した。
「クックックックッ……ハッハッハッハッ……ハーハッハッハッハッ!」

 冷酷卑怯のクラウ・ハデン。正体不明のハウザー・カッシュ。
 ナグモ・リューンの前ではなく後ろに懲りない残党がダブルで立ちはだかった。相手は、かなりの変態だ。どうする? がんばれ、ナグモ・リューン!!

 PS:ダンディ中年様とほなサイババ様、ゴメンナサイ。





【元宵】   


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