■ §1.1 歴史特集
§1.1.1 前神王期
〈二極期〉
アシュラ:初め、ザラスには光と闇だけが満ちていた。どのくらい前からなのかは、私
にはわからない。光と闇がどこまで広がっているのかも、我々には分からな
い。とにかく、一方に光が、一方に闇があって、その二つは決して混じりあう
ことのないまま、長い長い時を佇んでいた。
ナッシュ:この時代は、だいたいどこでも似たように教えてます。ただディヤウス神王
寄りの所では「善なる光と悪なる闇」というような形容詞がつきます。その
二つが不断の抗争を繰り広げていた──という。
〈混沌期〉
アシュラ:やがて〈光〉と〈闇〉の境界に〈混沌<カオス>〉がにじみでた。光と闇の両方の要
素を持つもの。我々神王の、そしてザラスのすべての元となったもの。それが
〈混沌〉だ。
神王暦前100周期頃のことだな。
ナッシュ:ちなみに1周期というのは世界樹の実の中に神王が過ごした期間のこと
で、1000年です。というより今のザラスの1年というのは、1周期を1000分
の1した時間なのです。
アシュラ:〈混沌〉というものの定義が、神によって異なっている。私のようにすべて
の源と考えるのが主流だが、中でも〈回帰すべきもの〉とか〈理想の状態〉
というように尊いものとして扱うのが、タクシャカやプリティヴィー、カーリヤ、
シヴァ。逆に〈忌むべき状態〉とか〈脱すべき状態〉として嫌っているのがデ
ィヤウス系の神と、ユガ、ヴィシュヌ、ヴァルナ、ナーガ、インダラ、ラクシャサ、
ダイティヤ。その他はよいとも悪いとも言っていない。
〈世界樹〉
アシュラ:前80周期頃、〈混沌〉は〈光〉と〈闇〉に圧迫され、やがて〈光〉〈闇〉に
亀裂が生じた。その放射状の亀裂に、凝縮された〈混沌〉が満ちた。この状
態の〈混沌〉のことを私は〈生命基〉と呼んでいる。
前50周期頃までに、〈生命基〉の外側、光と闇に触れている部分は硬化
していき、内側には、水によく似たものがめぐるようになった。これが固体と
液体──すなわち地の気と水の気のモデルになったものだ。
〈生命基〉は頭上に光を浴び、足下の闇を吸って、周囲に更に混沌を作り
出していくようになった。前20周期頃、光と闇は完全に分かたれ、〈生命
基〉は今でいう木の形をとった。この時期から、これを〈世界樹〉とよぶ。
〈生命基〉=〈世界樹〉のつくりだした淡い混沌は空の気のモデルとなり、
〈世界樹〉は植物のモデルになっている。
前1周期頃、〈世界樹〉の枝に果実が実り、根は根茎をなしていく。そして
その1000年後、果実は我々神王となり、根茎は妖人となったわけだ。
ナッシュ:この辺りからだいぶ解釈が分かれますね。
アシュラ:そうだな。まず、ブラフマー=世界樹を奉じる者たちは、世界樹自身の〈大
いなる意志〉というものを認め信仰している。特に光と闇を淡い混沌に変え
ていく過程を、〈大いなる純化〉〈生命活動のはじまり〉だとするのだ。
ナッシュ:ブラフマーは世界樹を擬人化した神格で、つまり自分で教えを説いている
わけではありませんが、古代の妖人はすべてブラフマーの信徒ですし、人間
でも一部教団が存在します。セルフィアーでは星薬会=アプシーズ・エルフの
勢力が大きいので、割と知られている考え方であるといえるでしょう。
アシュラ:ディヤウス系のところでは、ディヤウスが世界樹の一番上に、インダラが枝の
一番先、つまり果実の中で一番下についていたことを強調して教える。つまりデ
ィヤウスが一番偉くてインダラが一番卑しいというわけだな。世界樹に選ばれた
者、というわけだ。ま、他の神だってそれぞれなっていた場所を聖なる場所だと
こじつけて教えてるが。
ちなみに五十六神王それぞれの司る数は、生まれた順番だ。曜日は、ついてい
た枝に準じている。そして同じ枝の同じ場所から生まれた神王は兄弟もしくは親
子と言われる。
ナッシュ:妖人の方を詳しく扱う神殿はありませんねえ。
アシュラ:一応中立神の方ではそれぞれの神王に対応する妖人まで教えてるみたいだが、
大して意味を為さないからなあ。世界樹の枝と根はまるで水面に映った影のよう
に対称だった。つまり神王と妖人は一対なのだが、別に性格が似てるとかいうわ
けじゃないしな。
ナッシュ:ティターニアとメルリーラの二人は?
アシュラ:あれは二人が意図的にソーマと私の能力を擬してるだけだ。本来妖人の力は神
王みたいにはっきり分割されてはいない。しかしそれではやりづらいから、独自
の宗派を練り上げてるな。
§1.1.2 神王期
〈精霊王〉
アシュラ:神王と妖人たちは、昔はとっても仲が良かったのだ。世界樹と自分たちしかい
ないこの世界を、どうやってもっと居心地の良い世界にしようかとみんなで話し
合った。それが世界創造会議だ。
神王と妖人は、永遠を象徴する存在だ。成長することはなく、年老いることも
ない。死ぬこともない。その我々は力を合わせ、世界樹の樹液──甘露<アムリ
タ>を用いて混沌を分化し、そうしてつくりだしたものからさらに純化して精霊
を生み出した。
精霊は意志も肉体も持たないが一つ一つ「存在」する別個のエネルギー体だ。
その力を統御するために、我々は精霊王をつくりだした。我々と同じように意志
と(可変の)肉体を持つ生命体。それが精霊王で、のちの人間を初めとする動物
のモデルにもなった。
ナッシュ:ディヤウス系の所では、世界創造会議が全ての始まりのように言われてますね。
その座席までが定まってて、それがすべての儀礼の始まりだってことになってま
す。
アシュラ:ただの井戸端会議だったように記憶してるが。とにかく試行錯誤の時代で、い
ろんな力やいろんな精霊をつくっていた。この時の経験を元に、のちにみんな動
物や神族や無生物をつくっていくことになる。精霊王をつくるときはさすがにみ
んな慎重になっていて、始めから終わりまで失敗なく25体をつくったが、それ
以前にはいろいろと無茶なこともしていた。ディヤウスやアミタバなんぞといっ
た「秩序を重んじる」系の奴らは、きっちりと初めから計画立てて創造したこと
にしてるが、そんな筈があるか。当時は我々だって全然知識はなかったんだ。
それから、精霊王は人界をつくった後に発生したのだと唱える奴もいる。
〈七要素〉
アシュラ:で、神王暦1000年頃。ちょうど精霊王が作り終わった頃、情報を管理して
たマンジュスーリーがとんでもないことに気付いた。甘露が枯渇し、世界樹が枯
れ始めていたのだ。というか、もっと早く気づけよ。
我々も手を尽くしたが、ついに止めることはできなかった。そこでマンジュス
ーリーが提出したのが「創世案」だ。
甘露はわれわれ神王や妖人が生きていくためになくてはならないものだった。
甘露さえあればわれわれは永遠の寿命が保証されている。しかし甘露なしに生き
続けることは至難だ。死ぬことはないが、消滅してしまう可能性はあった。我々
は甘露に代わるエネルギー源を開発する必要があった。
創世案に従い、我々は新たな世界をつくりだした。ひとつ低い異次元の中に。
それが人界だ。別個多数の知的生命体を養殖し、彼らの思念を触媒として光と闇
をエネルギーに変換する。人界の地核はおよび地殻は世界樹の遺骸で構成され
た。液体──甘露はなくとも、固体部分は完全に残っていた。それを神王が直接
取り込むことはできないが、あらたな生命体の肉体の材料にはなると思われたの
だ。
人界を中心に、それより高次の世界も組み換えて接続し、精霊を七種に分けて
配した。これが天界や地界のもととなった。そこから、精霊王に命じて、人界に
各種の気を送った。気がいきわたった頃、世界樹をまねてつくられた植物が送ら
れ、次いで精霊をまねてつくられた動物が送り込まれた。そして神王をまねてつ
くられた人間──この時点では初期の言霊人──が送り込まれた。
アシュラ:ま、要するに、我々神王というのはエネルギー効率の極めて悪い存在なのだ。
存在し続けるだけで膨大なエネルギーを消費し、自分でエネルギーを作り出すこ
とはできない。そのかわり、エネルギーの変換や増幅といった技術は非常に高度
にもちあわせている。そういう生き物なのだ。だから、我々は「人間」に頼らざ
るを得なかった。そういうことだ。
ナッシュ:ディヤウス神王などは、「おまえたちを造ってやったのは神なのだから、私を
頼れ、拝め」といっていますが、それは大きな間違いだと。それがアシュラ様の
主張なのです。ま、どっちが正しいかなんてわかりませんけどね。
アシュラ:ディヤウスを拝んで心の安定が得られのならそうすればいい。だが、そうする
とすごく損をするぞ、と私は言っているのだ。
ナッシュ:七要素の起源はここです。あと動物、植物、人間といった生命体が大量に造ら
れ始めるのもこの時代ですね。
〈言霊人・言霊語〉
アシュラ:言霊人<イシス>がつくられたのが神王暦1250年頃。彼らは「言霊」を介
して、マナ──気の混合体を一括してこう呼ぶ──から直接エネルギーを取り込
むことができた。植物は光と闇からエネルギーを取り込む。動物は各精霊の力を
取り込む。しかしこの頃の人間にはまだ動植物をエネルギー変換できるだけの消
化器がそなわっていなかったし、食料にできるほど大量の動植物がいたわけでも
なかった。
それで言霊の力をエネルギー獲得手段として用いていたわけだが、だんだんと環
境がととのい、体内環境も神より「人間」に近づいていき、固体や液体から食料
を摂取できるようになると、言葉を交流の手段として用いるようになってきた。
これを言霊語とよび、すべての言語の原語となった。神王が精神感応によらず言
葉によって意志を通じるようになったのもこの頃だ。精神を直接触れあわすので
はエネルギー消費が多すぎる。一度音声に換算して情報を伝えると、それまでの
わずか4%ほどのエネルギー消費ですんだ。それが言語の発達した第一の理由だ。
これに最初に注目したのはカラヴィンカだった。私は彼女の助言を受けてわが
神族独自の言葉を開発しようとしたが、どうにもうまくいかなかった。そこで、
私を信仰していたナッシュを招聘し、こいつの知識でアシュラ神語を完成させた。
私がナッシュを重用するゆえんだ。
しかし、言語に変換して意志を伝えることには欠点があった。つまり誤解が起
こりやすくなったと言うことだ。それぞれの言語で考えるということは、思考自
体が自ずからその言語に縛られることになる。他の言語に完全に置き換えること
は不可能だ。まして己の考えを一度言語という媒体に変換し、それを受け取る側
も言語から相手の考えを憶測するというように、最低でも二度のフィルターを通
している。これが、人間<ナルス>創造の時にもめた原因の一つでもあるといわ
れている。
ナッシュ:誰が誰を重用していますって?
アシュラ:重用してるじゃないか。
ナッシュ:ほとんど使いっ走りという噂もありますけど。
アシュラ:それにしても、表紙の奴、誰だろうな? まるでファティマ・スーツみたいな
服してるが。髪は銀で瞳は赤……どっかで見たような取り合わせだな、ん?
ナッシュ:……はいはい、私ですよ。どーせ。
あれは人界にいた頃の私の絵です。どーせファティマ・スーツです。
アシュラ:上着は帝国軍の正服<せいふく>だよな。
ナッシュ:私は帝政ゼソン朝の第一期の将軍の一人でしたからね。これでも。
アシュラ:言霊人としては中期のはじめぐらいだったな。
ナッシュ:そうですね。動植物を一切食さず、マナのみで生きていたのが初期言霊人。動
植物を食べ、言霊術法をエネルギー摂取以外の目的にも使っていたのが我々中期
言霊人。言霊術法が高度に洗練され、またマナが希薄になり、エネルギー摂取は
すべて動植物にかわって言霊術法はそれぞれの家の系統しか使えないようになっ
たのが末期の言霊人、とこういう分類になりますか。
〈棲み分け〉
アシュラ:人界の環境がある程度安定し、人間<ナルス>が創造され始めたのが神王暦
1500年頃
のことだ。人間とは知的生命体の中でも最も汎用性と繁殖性に富み、どんな環境
でも適応していくことのできる究極にして最高の自己進化型生命体であった。そ
してどの神王、どの精霊王の力をどれだけ配しても同じ性能を得ることができ
た。どの神王がどれだけの力を配するかによって異なってくるのは、還元される
エネルギー量のみ。さて、どうする?
ということで、神王達は愚劣な争いを始めたわけだ。ちなみに言霊人は中期の
終わりから末期ごろに当たる。妖人達は星界と呼ばれる世界を創造してひきこも
った。よって妖人は人間の創造にかかわってはいない。妖人が力を貸してくれた
のは言霊人及びそれ以前の動植物までだ。
さて、神王たちは二派に分かれて争った。至高天神ディヤウス(天帝)を奉ず
る光の神々と、闇黒雷神インダラ(地帝)を奉ずる闇の神々だ。天帝派は天界を
創造して住まい、地帝派は地界を創造して対極の場所に住むようになった。どち
らにも属さない賢明な神は単独で異界を創造するか人界に下った。
ナッシュ:……すでに、他の神殿がどうとかいうことは放棄してますね?
アシュラ:もうこの辺まで来ると、それぞれがそれぞれの主張をしてるんで何がなんだか
もう整理しきれんのだ。確かなことは、光と闇はみんな自分が正しいと思ってる
ってことだけだ。自分がどっちに行けばよかったのか、未だに迷ってるのは、私
とガンガーぐらいだろうな。それに比べると中立神は賢明だ。中立神になるとい
うことはどちらからも援護をうけられないということだが、それでもやっていけ
るだけの力が彼らにはあるからな。
〈神々の争い〉
アシュラ:ということで、人界を舞台とした陣取り合戦が開始。神王達は、自分の属性を
もつ動植物、つまり神族の末端に連なる者たちを人界につくりだしていった。神
族を「墜とした」わけではない。神界、各神王の城下において神王に統治される
神族達をそのまま人界に連れてくることは不可能だ。少なくとも神将以上の力の
持ち主でなければ……。そこで人界に適合する種族をあらためてつくる必要があ
った。
霊木、霊獣、神人。そういったものたちを率いて、光と闇の争いが繰り広げら
れた。約500年もの間、その戦いは続き、地上には屍の山が築かれていった。
アシュラ:私も光の神として戦ったわけだが……。いや、たいへんなものだった。
ナッシュ:まあ、いろいろありましたね。最強の神であらせられるアシュラ様がこともあ
ろうに…………とか。
アシュラ:……まあな。
§1.1.3 帝国期
〈帝政チェリア朝〉
アシュラ:あまりにも争いが激しかったので、人界そのものが破壊されるのではないかと
おそれたディヤウスが、神王暦2000年、停戦条約をもちかけた。これがいわ
ゆる永遠の終結<エトームヴァオージ>だ。これ以降、天・地両界の神々は人界
に手を下せなくなった。
特に神将クラス以上の者は、一部の例外を除いて降りられないことになり、その
監視のため光の精霊王セレネは光の月を居城とし、闇の精霊王ルナは闇の月を居
城として人界の周囲をめぐることとなった。そして人界の支配は、中立の立場に
あった帝政チェリア朝に委ねられることになった。
言霊人の帝国にはいくつかある。まず最初に興ったのはレマリス大陸北方の山
岳地帯を中心としたアエナ朝。初期言霊人を統帥していた、いわば自治体の共同
体のようなものであった。
アエナ朝とは別に百数十年後にレマリス東大陸東部に興ったのが帝政ゼソン
朝。これはレマリス東大陸全土を征服し支配した、本来の意味での「帝国」であ
る。
その後、レマリス大陸西大陸の中央に位置するカラヴィン平原に興ったのがチ
ェリア朝である。チェリア朝は、神王に匹敵する力を持つ七つの家の者が共同支
配し、そのうちの一家を王家として強大な支配力を誇っていた。神々から人界を
委ねられると、またたくまに人界全土を征服し、各地を七地方に分け、それぞれ
に七家とその分家を送り込み、七つの王朝をたてた。そしてその後約300年の
間、人界を支配し続けたのである。
ナッシュ:アシュラ様、ナレーション口調入ってますよ。
アシュラ:あ、ああ、そうだな。世界に入ってたんで、気付かなかった。
ディヤウスとかの場合、圧勝だったのに追いつめられたインダラが何するか分
からないから停戦したようなことを教える。ディリーパの場合は、「慈悲深き」
ディリーパがディヤウスにとりなしたことになってる。
ナッシュ:真相は、どっちもこれ以上の争いは損耗を招くだけだと判断したからですよね。
アシュラ:もっと早く気づけって気もするがな。ま、私としてはこの戦いで「最強の神王」
の自称が伊達じゃないってことを充分に実証できたからよかったが、巻き込まれ
た人間やら何やらにとってみれば、いい迷惑だよな。
ナッシュ:インダラ神王や闇の神の場合、永遠の終結は「光の神の謀略によって無理矢理
結ばされたもの」だとしていますね。戦いを仕掛けてきたのも光の側で、闇の側
は応戦しただけだ、と。
アシュラ:闇側は手駒が少ないしな。それもあってだと思うが、私と干戈を交えるのは必
ずインダラ本人の率いる軍だった。人任せのディヤウスとはえらい違いだ。
ナッシュ:文民統制、とか言ってますけど、結局は逃げですからね……
アシュラ:まったくだ。
アシュラ:で、なぜチェリア朝か、ということだが。
ナッシュ:どっちの味方でもなかったからでしょう。
アシュラ:というより、神というもの自体を嫌ってたからな。光闇を問わず。人界は我々
のものだ、という考えが強かった。
ナッシュ:神をというより、他の知性体はみな目の敵にしてましたね。
アシュラ:だから神人も人間も蛮族扱いされて差別されていた。しかし、神王達は誰も制
裁を加えようとはしなかった。それは、言霊人がけっきょく滅ぶべき種族だった
からだ。老い先短いんだから……っていうのと同じ心理だな。
〈五種の民〉
アシュラ:さて、ここからセルフィアーに地域を限定して話すことにする。
五種の民の起源は、神々の戦争の時期に遡る。ナーラダ、ツァン、トゥーの各
部族は、神王暦1600年から1800年ごろにかけて、相次いでつくりだされ
ていった。造り主はご存知の通りナーガの神将ナンダ、私の部下のツァーラ、そ
れにクリシュナ配下のトゥルクだ。これらの部族は、他の神人たちと同じく、対
闇軍用につくりだされた戦士型の神人であるため、男女の別なく身体は頑健で、
言霊人や人間の平均よりもひとまわり大きい。ちなみに光の軍の将軍と言えばも
う一人、空軍将軍のガルーダがいるが、奴はレマリス西大陸南部に翼を持つ神人
と天馬をつくっている。
シャル族はどうかというと、人間<ナルス>とほぼ同時期、神王暦1500年
頃に、レマリス西大陸北部ファラガ地方においてつくりだされた。造り主はマン
ジュスーリー配下の神将シャル。彼らはシャルと共に転戦し、戦線が南下するに
つれて移住、
神王暦1900年頃にセルフィアーにやってきた。そしてあまり人のいなかった
島中央部のキーサ地方に住むようになった。永遠の終結締結後、シャルはマンジ
ュスーリーと共に天界に戻ったが、彼は王の一族にシャル姓を与え、力を分与し
て子々孫々に受け継がせた。これがキーサ王家の由来だ。
メール族は永遠の終結直後、つまり神王暦2000年頃に、マハーカーラが降
臨してメール山に身を変えたとき人間が力を受けて変化したものだ。
チェリア朝の支配中、島はセルフィアーとは呼ばれていなかった。アフネリア
邦国と呼ばれ、チェリア朝七邦国の一つだった。言霊人たちはセルファニア湖湖
底のティイセニラ、湖上都市スイモミスクを中心に島全土を支配し、術法の力で
高度な文明を築いていたが、その恩恵を受けられるのは言霊人のみであった。五
種の民や人間は高い税を払わされ、重い労役を課され、移動を制限されるなど、
被差別者とされて不便な生活を送っていた。
ナッシュ:……今、即席で設定つけ足しませんでしたか?
アシュラ:気のせいだ気のせい。
ナッシュ:まあ、そんなもんでしょうけどね……
〈独立戦争〉
アシュラ:五種の民達はじっと期を待った。感情で反乱を起こしてもすぐに鎮圧されてし
まうことは分かっていた。反乱を起こすための話し合いができるほど、彼らは自
由ではなかった。彼らは数十年をかけて、子弟を教育することに専念した。自分
たちが虐げられるべき人間ではないこと、誇り高い神人であること、いかに言霊
人達が自分たちに不当な扱いをしてきたか。それに、戦うための方法、秘密を隠
匿することなど、市民教育から戦士としての教育まで、さまざまな知識や技術を
刷り込んで、期を待ったのだ。
彼らが本格的に言霊人と戦線を張ったのは神王暦で2290年、帝国暦でいう
と290年を過ぎた頃からだ。言霊人たちが力の源としてきた大気中のマナはし
だいに減少し、言霊人の中にも力を失う者が多く出てきた。支配者層──七大家
は彼らを忘人<チャーズ>と呼び、都市から追放し神人や人間「蛮人」よりも低
い身分として
抑圧したが、神人達は忘人を取り込み、情報を収集し技術を高め、独立のための
力としていった。帝国暦296年からは独立軍と称し、各部族の戦士達が終結し
て統一戦線をひいた。帝国暦301年、独立軍はアフヌマ王家を滅ぼし、ティイ
セニラおよびスイモミスクを封印・破壊し、さらには島全体を巨大な潮流の結界
でおおって独立を果たした。この年を独立暦1年とし、これ以来この島はセルフ
ィアーと呼ばれることになるわけだ。
自分たちの力で独立を果たしたことを、神人たちはひじょうに誇りにしている。
だから言うのははばかられるのだが、言霊人に勝利した背景には、ディヤウス達
の工作で言霊人の力が弱ってたことと、セルフィアーに神人達の利用しやすいよ
うな(水とか植物とかといった形に化身した)気が豊富に集まっていたこと、そ
れに伝わらざる一人の英雄の働きがあってこそなのだ。セルフィアーの人間には
言わないが……。
ナッシュ:私見入ってます。
アシュラ:うん、分かってる。
ナッシュ:「霊珠」のネタ振りも入ってますね。
そう言えば独立の五人の英雄ってのがいませんでしたっけ。
アシュラ:この島の人達、何かというと五人の英雄ってつけたがるからな。一種族一人。
まあそこまではいいだろ。「霊珠」でまた設定変わるかもしれないし。
§1.1.4 黎明期
アシュラ:さて、独立を果たしたセルフィアーには、400年ばかりわりと平穏な日々が
続くことになる。自主・独立を標榜し刷り込んできた以上、大きな国をつくるこ
とはできず、政治は邑ごとの小政府でおこなわれることになった。独立暦3年、
キーサ王国建国。独立暦257年地の月15日、ティターニア・メルリーラ降臨。
星薬会発足。独立暦272年、蜘蛛会発足。
アシュラ:この辺、けっこう穴だな。
ナッシュ:そうですね。すかすかですね。
アシュラ:独立後100年〜200年ぐらいは、「統一は悪」的イデオロギーが全土に深
く浸透していたから、それで統一の動きは全くなかったわけだ。これは平和を保
つとかそういうことを論ずる以前の問題で、毒を盛ると悪とかそういうのと同じ
次元の感覚だな。
ナッシュ:わからないです。読者には。
アシュラ:だからなあ。統一という行動に出ないということ自体、なんだかこうおとなし
げな感じがするだろ。そうじゃなくて、チェリア朝時代の反動で、邑ごとに独立
してるってことがポジティブなことなの。だから400年間「平和」だったのだ。
ナッシュ:やっぱりわからないです。
アシュラ:とにかくそうなのだ。
〈MCPGの時代(群英伝の時代)〉
アシュラ:独立暦394年。神王暦2694年。何の年かわかるな? そう、「アーヴの
戦い」だ。キーサ王国王宰ヌーグ=シャルが周囲に侵攻を開始、戦乱の時代が幕
を開ける。
そして独立暦400年、ウォウル、レディア、イリスが王国を宣言。あとは各
々知っているとおりだ。
ナッシュ:総まとめ本をご覧下さいね。
§1.1.5 五王国期
〈五王国期前期〉
アシュラ:で、その後の時代になるが、ま、予定ではこうなってる。
独立暦602年。ナーラダ=ウォウル王国成立。
独立暦615年。メール=イリス王国成立。
独立暦633年。トゥー=シュナフ王国成立。
独立暦649年。ツァン=レディア王国成立。
独立暦660年。「帝政ブガール朝」建国。
ナッシュ:(部族)=(王国名)王国、というものに関して言いますと、この年、つまり
MCPGの時代から200年〜250年後、それぞれの部族は完全に統一がなさ
れ、部族と王国が同一のものとなります。といってもキーサのような王政という
わけではなく、部族内で選ばれたいわゆる族長が王として立つのです。ヴィレク
君がさんざんほのめかしていた王政というのは、この制度のことなのですね。
アシュラ:裏設定を教えてもいないのにスィスニアはさんざんウォウルをおびやかしてい
たが、ナーラダの中ではウォウル、スィスニア、イレーヌの三都市が鼎立して、
スィスニアには術法と竜眸石を握る「術の部族」、イレーヌには竜骨棍をもつ精
鋭部隊をかかえる「技の部族」、そしてウォウルは高度な政治都市となって両部
族を調停する王=族長が立つ、という予定なのだ。それにしちゃイレーヌのイー
家はまだ全然出てこないな。
ナッシュ:で、「帝政ブガール朝」のことなのですが……
アシュラ:これは初耳だろうな。前の項で帝政チェリア朝が「忘人」を迫害していたこと
は述べたと思うが、その忘人たちは人間の中で人間として生きている。しかし、
世代を経て、その先祖の能力が発現したりすることも、たまにはあったりするわ
けだ。で、それが知れると、親に捨てられるとか、神人から迫害されるとかいう
こともあるわけだな。
そういう境遇の忘人、いや、言霊人の子孫たちが、南の「闇の森」いわゆる樹
海の中にこっそり住んでいる。これはMCPGの時代からいるのだが、それにも
う一種族の知られざる神人が加わって建てたのが「帝政ブガール帝国」だ。
ナッシュ:知られざる神人、って、あれですか。
アシュラ:そう、あれ。「ルナ=闇の部族」。これもプレイヤーの人には初耳だろうね。
セルフィアーを欲しがってるのは光の神々だけじゃない。そして神人という存
在も光の神々の専売特許じゃない。「永遠の終結」は、神王や神将が地上に降り
ることは禁じたけど、あらたな下級神族を降ろすことは禁止していなかった。た
だ、神人を創るより人間の信者を増やすほうがコストがかからないから、みんな
やらなくなっただけだ。
だがインダラはやった。神王暦も3000年近くなってからこの法を使ったの
はインダラだけだ。その闇の部族と、言霊人の生き残り、それに犯罪者や逃亡者、
生活破綻者やその子孫が集まって、ひとつの「帝国」をたてた。おかげでレディ
アとキーサの領土は以降だいぶ削られ、それが五王国期を戦乱の時代にしていく
一因になるわけだ。
ナッシュ:レディア王国が成立して五王国が揃ってからを五王国期と呼びます。その前が
黎明期。歴史学上ではそういうことで。
アシュラ:で、その後、長ーい空白の時代がある。作者がつくってないだけだが。
ともかく色々あって、五王国が広がったり縮んだり。大きな違いとしては、五
王国期後期からは、ウォウル王家だけは潮流の外に出て貿易できるようになると
いうことだ。長崎の出島みたいなものだな。それで、一種の天馬の輸入や、数は
少ないが多種族の流入、通貨の改定、といった事項がおこる。また、術法がきち
んと系統立てられ、学問所にさえ通えば誰でも習得できるようになったり、職業
を得るのに資格が必要になったりと、いろいろ社会的に、というかCPGルール
的に大きな改革が起こるのだ。それで余裕をもって年代を設定したら、神王暦
4000過ぎまでの約1000年の間、何も決まってない(笑)。
ナッシュ:いちおう連想としては中国の春秋戦国時代〜秦漢〜三国志〜南北朝あたりが黎
明期から五王国期という流れにあたると考えてください。幅が広すぎるって?
そこら辺はご随意に、ということですので。
〈五王国期後期〉
アシュラ:で、五王国期の後期に入るのは独立暦で1714年。神王暦の4014年から
だ。
この年に、シュナフ王国がキーサの侵略で一時断絶し、ウォウルに助けを求め
ている。これからしばらくシュナフは「公国」という名でウォウルに従属して
いたが、独立暦1770年に再興。
また、長らく他族の下に甘んじていたナルスが、独立暦1795年、ナルス=
カルナ王国を建てるが、1810年にはキーサに滅ぼされている。
というように、五王国期の後期には色々浮き沈みが激しくなってくるのだが基
本的にはやはり五王国がつつき合っていると思ってよい。
ナッシュ:キーサは強いですね。
アシュラ:うん、まあ、南のブガールに圧迫されてるので、どうしても矛先がトゥーやら
にいくわけだな。基本的にキーサは強いな。ウォウルも。それに対して、弱くて
どうしようもないのがレディア。
ナッシュ:アシュラ様の神族じゃないですか。
アシュラ:うーん、個人的戦闘力はあるはずなんだが、いまいち団結が弱くてなあ。五王
国期初期にブガールから国名の起源でもあるレディアを取られて、以来ずっと統
一期になるまで取り戻せないんだもんなあ。不甲斐ないことこの上ないが、まあ、
わが神人らしいとも言えるな。
§1.1.6 統一期
〈英雄伝の時代〉
アシュラ:神王暦4352年、独立暦では2052年、ナーラダ・シーという男がウォウ
ル王に即位。彼はその7年後、神王暦4359年にはセルフィアー全土を統一、
(ただしブガールは除く)、セルフィアー王を名乗る。遡って彼のウォウル王即
位の年を英雄暦1年とする。
彼は死後大英雄と尊称されるが、まるで奇術師のような男だった。鮮やかな手
並みでさっくりと全土を統一してしまい、まるでこれまでの2000年が戦乱が
嘘のようだったと、誰もが言った。彼は王政を復活させ、これまでの部族制と両
立させた「二重統治制」を確立させようとした。しかしそれは彼の死後すぐに崩
れた。彼の嫡子はあまりにも凡庸な男だったのだ。王国は再び分裂し、五王国時
代が再来したかと思われたが……
ナッシュ:いちおう、「英雄伝」書こうかと思ってるらしいんですが、まだ決まってるの
はタイトルと主人公だけのようですね。
アシュラ:主人公は大英雄か。あとは「五傑」だろうな。安直な。
〈七星伝の時代〉
アシュラ:神王暦4401年、英雄暦50年、セルフィアー王国王子ナーラダ・ジャナカ
がクーデターを起こし、父王を退位させて第三代王となる。この年を七星暦1年
とする。
彼は個人的人脈と根回しで王国をふたたびまとめてしまうが、ブガールを滅ぼ
すことで武の才を示したため、各公国(旧ウォウル王国以外の王国は大英雄以来
こう呼ぶ)の民も統治層も納得し、セルフィアーは真にひとつになった。彼と彼
を支える者たちを七星と呼ぶが、実は彼らは天界神の下した「七星珠」を体内に
宿す、神に等しい力の持ち主であったのだ。
が、彼らを待つ運命は哀しいものだった……
アシュラ:こう書くと何か男らしい人物のようだよなあ。
ナッシュ:軟弱王子ですよね。
アシュラ:軟弱だな。
……これ以上この時代にふれると、作者が暴走しそうだから先を急ごう。
〈盟主伝の時代〉
アシュラ:七星暦30年、神王暦4430年、ジャナカ没。同年、ブガール帝国の生き残
りが「帝政ガザール朝」を建国。
七星暦42年、神王暦4442年、第四代王ナーラダ・クーティ、王弟ダルー
に暗殺される。王弟が即位するがやはり歴史は繰り返すもの、各公国はふたたび
離反した。
クーティ王の死と同日、王女リョウが誕生する。子のない王弟の養女とされる
ところであったが、王廷司祭カスティア=シャルによって連れ出され、ジャナカ
の兄ダードゥに預けられる。(ザラスU「炎の従者」)
ダードゥの孫として育てられたリョウは、自らの出生を知って、ダルーを倒し、
王になるために旅立つ。それが七星暦54年、神王暦4454年。
世界を回り、二十五のアイテムを集め世界の気脈を制す「盟主」となったリョ
ウは、潮流の結界を解き、セルフィアーを長年の鎖国から解き放つのだった。
(ザラスX「盟主伝」)
ナッシュ:この辺に来ると、「あらすじ」になってますよね。
アシュラ:盟主伝あたりまで来ると、どこが歴史なんだ冒険ものじゃないか、っていう雰
囲気だが、そもそものザラスの原点はここだからなあ。
ナッシュ:リョウちゃんの背景設定に端を発してるんですよね。本当はリョウのおじいさ
んが大英雄だったのにダミーで設定した「七星」の方が気に入っちゃって、挿入
したら歴史は繰り返す、繰り返す……(笑)
アシュラ:私の神将になるカスティアの話も早く書いてやって欲しいよなあ。
アシュラ:一応、神王暦10000年頃の話とかも考えてるようだが。
ナッシュ:あれはまだ全然練れてないから出せませんよ。
アシュラ:ってことは、この辺までだな。歴史特集。
ナッシュ:打ち止めですね。他の地域の話とか外伝とかザラス神話編とかに入るとまだい
ろいろあるでしょうが。
アシュラ:……やめておけ。
ナッシュ:そうですね、やめておきましょう。ページ数も大変なことになってきましたし。
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