会誌-「サークル水月会誌 第5回」

■ 「円卓」の巻  【作者:砂の山】


 サナ岬にほど近い、セルフィアーの西といえば、そこはトゥルニア。 あなたも訪ねればわかるが、邑内に一軒だけ、屋根がまっ赤な、しかもその上に金しゃちが一匹ぴこんと乗っている東屋がある。すぐにわかる。
 そこでは、「トゥルニア円卓会議」、またの名を「おたっしゃクラブ」ともいう会合が開かれている。雨天決行だったから、ほぼ、毎日。

 ずず……ずずずい。
 「うむ、きょうも茶がうまぁい。のーう、ポムじいさん」
 「なーになになに、わしゃあ、きのうの会で飲んだ、あのうすうす二番茶の出涸らしかげんが最高じゃったぞい」
 「やれやれ、なんちゅう悪趣味なじーさんだぞい、このポムじいは。歳をとっても、こういうふうにだけは、なりたくはないもんじゃ。のーう、ポムじいさん?」
 「なーになになに、こいつのよさがわからねえたあ、ロム、おまいさんも、まだまだひよっこだっちゅうこったな。ふはふは」
 会議はずずいと踊る。

 くかーっ。すぴぴぴ。
 「お茶は濃いのが一番。茶っ葉はケチっちゃだめだよねー」
 「おうおう、このダナスは。歳をとるなら、やっぱりこういう妖人みたいにならなイカンちゃ。のーう、ポムじいさん?」
 「なーになになに、何でここにいるのかを忘れて、すっかり雑談に溶け込むようじゃまだまだよのう。ふはふは」
 「あっと、そうなんだよね、ポムじい。じゃあさ、もうこれで5回目なんだけど、あえて同じ質問をするんだけどね、ポムじいにロムじい。それと、ちょっと、起きてよ、ドーラばあちゃんっ(げしっ)」
 「ふあああ、まったく、この三人の話につきあっとると、よく眠れますなあ」
 「今日は、さいしょっから寝てたくせにっ。気配すら消えちゃってたから、すぴすぴいうまで、気がつかなかったんだよね」
 「なんじゃ、この妖人は? めずらしいのう、こんなところで妖人とは。おまいさん、名をなんという?」
 「ダナスっていうんだけど……って、ドーラばあちゃん、これなんか、名乗りあってからもう7回目でしょ、いいかげんコテコテじゃないのー、このギャグ?」
 「これこれ、ダナス、ギャグではない。マジですなあ、これ」
 「じぶんでいう、それ?」
 『いわんのう』と三人同時に音声多重。
 会議は笑う。ひほ、ひほほ。

 「それじゃ、あらためて聞くけどね、最近ここいらへんにバルスっていう邑がわいて出たって話し、聞かない?」
 「いんや、きかんのう。ふはふは」
 「だって、やたらと元気のいい妖人と、トゥー族の落ち着いた感じのと、ウワサの金銀コンビがネヴェの森あたりをうろついてたって聞いてるよ?」
 「そーいうのは密猟者にきまっておる。のーう、ポムじい」
 「うむ。塩の樹は大切にせにゃ」
 「そりゃそうだよね。あんな変なのをここでも、っと……ねねね、じゃあさ、ここの邑宰家のなかに、ロアっていう人いる?」
 「はて。たしかそんな子もいたような、いないような……わすれましたなあ」
 「物知りドーラよ、おまいさん、じつは物忘れが激しくなっとらんか?」
 「そうですなあ。けどの、そういうポムじいは、何かしっておるのかね」
 「いんや、なーんもしらんのう。ふはふは」
 会議はいんやうむはて、わからない。

(ロアにかきごおり頼まれたんだけど……バルスわかんないんし。セルフィアーもこれでけっこう広いからなー。ま、いっか。かーえろっと)
 そして今日も今日とて、会議は続く。

 お薬屋さんダナスの日々も続く、のだ。


【砂の山】


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