会誌-「サークル水月会誌 第4回」

■ お姉ちゃん発見!  【作者:三純 るく】


 ジュシー邑に着いたのは、丁度お昼時だった。
「こんにちはー。」
 僕が入ったお店、「銀のたてごと亭」には他のお客は1人もいなかった。何か軽い食事でもとろうと思ったのだけど。
 そのかわり、一人の長身のトゥー族の人が机を動かしたり、書類をそろえたり、そうかと思うと壁の絵の傾いてるのを直したりと、まるで大掃除みたいなことをやっている。向こうをむいてるから、僕には気付いてないみたいで、その人は床に置かれた荷物の荷ほどきをしながら鼻歌まで歌い始めた。涼しげに澄んだ声が楽しげに聞こえてくる。若いお姉さんらしい。とにかく、今日はお店はお休みらしいから、僕は出て行くことにして、戸に手をかける。その時、
「おかえり、ロア。早かったですね。あっちの方はどうでしたか?」
 木戸の開く音が聞こえたらしくて、話しかけられた。でも、人違いだ。下を向いて作業中のお姉さんは、相手を見ないで自分の知り合いだと思ってしまったらしい。
「あの、僕、お店開いてると思って来ちゃったんです。じゃましてごめんなさい。」
 僕がそう言うとお姉さんは、そこで初めて顔を上げて僕を見た。そしてちょっと恥ずかしそうに笑った。
「いえ、こちらこそ人違いしてしまってごめんなさいね。ちょっと用を頼んだ仲間が帰ってきたとぱかり思ったんです。このお店は、これから事務所として使わせてもらうから、お休みなんです。あっ、今度こそロアが帰ってきましたね。」
 振り向くと、入ロに大きな銀狼を連れた若い男の人がいた。銀狼とおそろいみたいな銀の髪。いい人そうな笑顔で僕を見おろしたその人は、おや、お客さんですかと明るい声で聞いてきた。間違えて入ってきたんです、って、今日2回目の説明。3人目が来ないうちに出て行く事にしよう。
「そうですか。もう人が来てるのかと思いました。ところで、商工会議所の方も借りられそうですよ、セフィルさん。バルス計画の拠点はやはり、ここに置いて良かったですねー。建邑予定地がすぐそこだって、ヴィーシアさん大喜びです。」
「今、何て言ったのっ?」
 真面目そうなお兄さんは、びっくりしたみたい。でも僕も必死。だってヴィーシアお姉ちゃんに会うために、僕ははるばるアプシーズから来たんだ。大荷物持って、うわさをたどって。
「お姉ちゃんの、ヴィーシア=アプシーズの仲間の人なのっ?」
「そうだけど……もしかして、弟さんか何か?」
「まあ、そんな感じの者です! お姉ちゃんに会わせて下さい。」
 かくして僕は、255才年上の「姉」に会う事ができた。
「ヴィーシア姉ちゃん、お久しぶり!」
「ルウじゃないか! よく来たなァ。行き先とかは手紙に書かなかったのに、よくここまで……。」
 僕を連れてきてくれたお姉さんとお兄さん、セフィルさんとロアさんは、不思議そうな顔をしてる。妖人のヴィーシアお姉ちゃんと、ナーラダの僕の姉弟(きょうだい)──しかも数百年年の離れた──は、ちょっと奇妙に写るだろうから。でも、血はつながってない。5年前、野盗に襲われた旅芸人の一座の生き残りの僕は、通りかかったお姉ちゃんに拾われた。お姉ちゃんの家で、家族同様に面倒を見てもらっていたんだ。
「そうそう、お姉ちゃんの旅立ちの宣言のお手紙読んで、お母さん卒倒しちゃったんだよ! で、心配で仕方ないから僕に、手伝いに行ってやってほしいって。お姉ちゃんは昔からちょっと脳天気すぎる所があるから、しっかり者のルウがついててやってよ、って言ってた。」
「……言ってくれるね母様。」
「でね、これを渡してって。父さんと母さんの作ったお薬だよ。こっちの小さな箱はお姉ちゃん専用のだって。」
 開けたお姉ちゃんは……ガクッと首をうなだれた。一体何が入ってるんだろう? ちょっと見てみたら……そこには見るからにお子様用のシロップの飲み薬(いちご味)や、ウサギさんが「1日3つ飲んでネ」なんて言ってる絵のついた糖衣錠なんかが『シアちゃん専用』と書かれた手書きのメモと一緒に入ってた。……これは恥ずかしい。
「母様……私をいくつだと。」
 ひきつった顔でつぶやくお姉ちゃん。ロアさん、セフィルさんは、必死に笑いをこらえて肩がふるえてる。

 次の日、ようやく立ち直ったお姉ちゃんは、僕を皆にちゃんと紹介してくれた。弓が特意な僕は、セフィルさんの作る弓部隊に入ることになりそう。今は建邑計画のお手伝い中。ルウ・ファルス・15才・バルスの一員としての生活は始まったばかリだ。

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