会誌-「ザラスMCPG マニュアルvol.1」
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■ §3.7 ナルス [リアクションNO.7−0]
髪:黒〜茶/瞳:黒〜茶/肌:雪白〜褐色 属性=地:14/水:15/風:14/火:15/天:14/空:14/人:14 人口:12% 平均寿命:50歳 性格:計算高い 剣勢:鋭剣 能力値へのボーナス 天運(LU)+10 姓の例
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ナルス。人界のあらゆる場所に、強靭な生命力をもって適応し、住まう種族。 この種族が迫害された、という記録は、セルフィアー独立以来どこにもない。 人間、という字が当てられる。神々によって創造された種族のうち、神に似た肢体をもち二足で歩き、服を着、言葉を喋り文化を持つ者はみなそう呼ばれる。だがたいていの種族は、他にも呼び方があった。神人とかナーラダ族、あるいは黒竜の一族などという呼び方がそれである。 だがナルスにはそれがない。 すべての神々の恩寵を均等に受けて生まれた。そのことには、彼らを平等を象徴する者としようという意図があったのだ。とディヤウスの神官は主張する。我らをおつくりになった神々は、我々を等しく神々の子とされたのだ! 他地では通用する。喝采をもって迎えられる。だが、その言葉は神人の多いこの地では虚しくひびく。 すべての神々の恩寵を受けて……か。しかしそれは、すべての神々の憎しみをも、同時に受けたのではなかったのか。 迫害されはしない。だが、認められてもいない。 そうでないというなら、何故、「五種の民」などと言う。何故、我々はその一員と数えられない。我々とて、同じ地に住む者ではないか。 ……こんな疑問にかられる時が、幼い頃から幾度もあった。 「仕方がないんじゃよ」 諦め顔で、老人は笑う。 「我々の祖先は、独立戦争の時に、神人たちと手を結んで戦うことをしなかったんじゃ。じっと身をひそめ、戦いが終わるのを待った。だから、居住地も狭いところに限られるようになった。五種の民と併称されなんだのもそのせいであって、彼らのせいではないんじゃ」 「じゃあ何で、戦わないの。戦って城を取っちゃえばいいのに」 「これこれ、そんな殺生なことを口にするでない」 老人は穏やかにたしなめた。そして言い聞かせる。 「我々ナルスにはな、メールのような圧倒的な強さもなければ、シャルのような冷徹な頭脳のキレもない。トゥーのような器用さもなければ、ツァンのような軽捷さもない。ましてやナーラダのような底なしの気力もない。戦などやって、勝てるはずもないんじゃ」 「じゃあ、僕たちには何があるの。何か、神人に勝てるものがあるの」 老人はその問いを待っていたようだった。白い 「そうさのう、たった一つだけ、持っとるものがある。決して他族に負けなんものがの」 「えっ、一体何? 何なの?」 少年は瞳を輝かせた。老人は静かに言った。 「それは、運じゃ」 「運?」 「そう。強運、と言ってもよいかの。これだけは、決して負けぬ」 「でもさ」 と少年は頬をふくらませた。 「運じゃ戦には勝てないでしょう?」 「戦のことではないんじゃ」 老人は少年の黒髪をなぜた。 「お前は、戦に勝つことだけを強さだと思っておるだろう。だが、違うんじゃ。のう、ユタ、わしらは今、こうやって各地をめぐっておるな。それは何のためじゃ?」 「商売のため」 少年は答えた。彼の乗っている馬車の後ろに続く数台の荷馬車には、今秋収穫したばかりのターヌの米がぎっしりと積まれている。 「そうじゃ。この荷を売って金を得る。その金で馬車を買い、より多くの商品を買いこむ。そしてまた売る。運がよければ金が儲かる。運が悪ければ……盗賊に掠め取られるかもしれんし、途中で腐って売り物にならんかもしれんのう。それが商売というもんじゃ」 「運が強ければ商売で勝てるの?」 「そういうことになる。頭も多少は要り用じゃが。だがそれだけではのうてな」 老人は空を仰いだ。美しい空に西の方から雲が流れ込もうとしている。 「物がのうては戦ができぬ。ユタよ、お前は剣も槍もなしに戦ができると思うか?」 少年は首を横に振った。 「 また、首を振る。 「食べる物がのうたら? 薬は? 着る物は? 馬は?」 「できません」 「そう、その通りじゃ」 老人は満足げに笑った。 「その、剣やら鎧やら食糧やらを我が手に握って、それを使おうという所に高く売る。これが商売よ。いいかユタ、我らには金と情報が武器じゃ。よく、覚えておくがよい」 「──はい、よく覚えております」 あの老人が一体自分の何であったのか、今となってはよく分からない。分かっているのは、自分の実の祖父ではない、ということだけである。だがそんなことに何の意味があろう。幼くして両親を亡くし、彷徨っていた彼を、一文の得にもならぬのに養い育ててくれたあたり、根っからの商売人と自称する割にはだいぶ手ぬるいと言えなくもない。さらに、ぽっくりと逝ってしまったあとに残ったものはすべて彼が受け継ぐことになったが、人生すべて商売に捧げてきたにしてはその量は些少にすぎた。ただ、彼に老人が語って聞かせた人生観、商売論といったものは、彼の心の中にすべて碑のように明らかに残っている。 「神人たちには戦をさせておけばよい。我らナルスは、金と情報を武器とし、物資を我が手に握り……そして、それを使おうという所に高く売る。そしてまた金を得、物資を握り……」 そして、セルフィアーを掌の内に。 灰色の瞳をした少年は、そう呟いた。 「セルフィアーを掌の内に収める、か」 純白の衣を着た少女は、くすくすと笑った。 「面白いことを言うのがいるじゃないの。これ、どこの誰の発言かしら」 「エイラ姫」 同色の衣をまとった侍女のような女性がたしなめる。 「わが 「遊びなんかのつもりじゃないわ。わが蜘蛛会にとって、有為な人材の発掘をしてるのよ」 「とか何とかおっしゃって、また男探しをなさろうと!」 「この間のあれは……、たまたま声かけたのが男の子だっただけじゃない」 「姫!」 女性が大声をあげたとき、紫の正服に身を包んだ青年が入ってきた。女性はひとつ咳払いをし、少女は真面目な顔をつくる。男はにこりともせずに一礼した。この堅物、とエイラは心中で罵り、そのおかげで男の第一声を聞き逃すはめになった。だが幸い、お人払いを、と言っただけであるようだった。エイラが何も言わぬ前に、部屋にいた男女あわせて十人ほどは、すぐに部屋から出て扉を閉める。密室が形成された。この神殿に祀っている舞踏神ナタが、間諜たちの守護者でもあることからの構造であった。 「非常に重大なご報告で……」 「そうじゃなきゃ、人払いなんてしないわよね」 「事はセルフィアー全土を揺るがすほどの……」 「そうでしょうね、でなければあんたみたいなつまんない男の顔なんて、見たくないわ」 男は困ったような顔をした。まったく、ここで気の利いた答えの一つも返せば、私も蜘蛛会の会堂に移ってあげるのに。何でそれがわからないのかしら。 「用件をさっさと言いなさいよ」 「は、では申し上げます」 その前置きがよけいなのよ、と毒づく。だが次の言葉を聞いた瞬間、エイラはとびあがった。 「ウォウル邑宰が王号を称した、ですって?」 「はい、そ、そうです」 「何てすばらしい!」 「は?」 エイラの意外な反応に、男は面食らっている。このわがままな「姫君」は、絶対に怒り狂うだろうと思っていたのだ。 「素晴らしいわ! やはり男はそうでなくっちゃ! ……ね、ウォウル邑宰って、美少年なんでしょう?」 「は、そうと聞き及びますが……」 「肖像をもってらっしゃい。実物と寸分違わないような物を、もちろん特注でね。一週間以内にそれを私の私室に飾っておいてくれたら、私、会堂に移ってもいい」 「は、はい、すぐにそう致します」 男はそそくさと出ていった。肖像一枚で「姫君」を動かせるのであれば、いくらでも手は打つつもりであった。 「姫、会長丞との会見の後にしては、ご機嫌が異常によろしいですね」 神官たちがいぶかしむほど、エイラは上機嫌であった。 「まあね」 エイラも多くは語らなかったが、先刻の女司祭にだけは密かに命じた。 「さっきのあの発言をした人を連れてらっしゃい。すぐに」 「すぐに、ですか?」 「これは大司祭命令よ。嫌だと言ったら平神官に落とすわ」 「……分かりました」 幸い、情報を持ってきた間諜がまだ神殿内にいたので、その者を手がかりにすぐにその呟きを洩らした者を掴まえることができた。 「ナタ大司祭がお呼びです。お急ぎでなかったら、少しお立ち寄りいただきたいのですが」 口調は丁寧だが、これは強制である。少年は訳が分からない。ナタといえば、間諜と舞踏の神。商売の神のクベーラなら分かるが、ナタ大司祭がなぜ自分を呼ぶのだろう。ナタ大司祭といえば若い美女と相場は決まっているが、まさか取って食おうというわけでもあるまい。 「こちらです」 隊商は表に残し、奥へ奥へと入っていく。これまで入ろうと思ったこともなかった場所だが、まるで迷路のように入り組んでいる。一人ではとても出られそうにない。 最奥部の扉を開けると、外観からは思いもよらぬような大きな部屋になっていた。その中央にあつらえてある舞台の上に行儀悪くこしかけた少女は、たしかに噂通りの美しさだった。 「早かったわね、褒めてあげるわ、とりあえず」 まずは誘導してくれた神官の方に言矢が飛ぶ。神官はひるまない。 「なかなかの難事でございました」 「嘘つき!」 と叫んだが、そんな暇はないことを思い出し、少年へと向きなおる。 「あなたね、セルフィアーを掌の中に収める、とか言ったの」 どこから入った情報だ、と言うも愚かである。思い出した。彼女は確か、蜘蛛会の会長をも兼任していたはずだ。それで情報をつまみ食いしていて、僕を知ったのか。 「ええ、確かに言いました」 かすかに笑いの表情をつくる少年を、エイラはとっくりと観察した。灰色の瞳は、入ってきたときにはやや暗く感じられたが、こうして見ると、日に焼けた肌に映えて、仲々の美童っぷりである。とは言っても、歳はエイラと同年ほどであるに違いない。一五、六といったところか。 「気に入ったわ」 エイラは手を伸ばし、少年の髪をつまんだ。癖のない黒い髪をすく。まるで小動物の毛並みを愛でているような風情である。 「本気で、そう思っているのね?」 「勿論」 ユタは即答した。 「元手と、機会さえあれば」 「機会は今よ」 エイラは囁く。ユタは耳を疑った。これは、情報を漏らしてくれているのか? 僕などに? ユタの微妙な困惑を感じとって、エイラは補足した。 「この情報はすぐ洩れるわ。だから詳しくは言わない……ウォウルへ行きなさい。ウォウルで、武器と食糧を売るのよ。元手は私が貸すわ。いずれ、何倍にもして返してもらうけど、確実に儲けられるネタよ」 「姫……!」 司祭は止めようとしたが、エイラの一瞥で反論を封じられてしまった。ユタは、すでに、言われる通りにするしかない、と腹を決めている。 結局、司祭も押し切られ、ユタに神殿の財を貸し与えた。 これが、ユタにとって吉と出るか凶と出るかは、まさに神のみぞ知る、というところであった。 |
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