会誌-「ZARASU-2002 夏 -ルタン-」

■ 「スウィズ・ライル社とはなんぞや」―独立暦400年水の月現在―

【元宵】   


ナタケ:皆様はじめまして。お久しぶりの方は、お久しぶりでございます。私はライル社の社長を務めさせていただいているライル・ナタケと申します。
ハデン:そのナタケを補弼するクラウ・ハデンだ。今日は皆にライル社というものを簡単に説明しておこうと思う。何せ特異極まりない組織だからな……。


壱−短いけど、歴史

ナタケ:創立者は私の父であるガズカでございます。えっと、父は武器商人であると同時に優秀な創師(マジックアイテム職人)でありまして。
ハデン:彼は独立暦395年に創師商会を設立した。それまで個々ばらばらに工房を持っていた創師達を組織化し、宝器(マジックアイテム)を量産することが目的だったわけだ。
ナタケ:元来が武器商人であり、野心にも富む父はこれによって強力な武具を作り、394年のキーサ動乱(シャル族の第一人者ヌーグ・シャルの隣邑併合に端を発した戦乱)以降、乱世へと動き出した時流に乗って経営を拡大していきました。
ハデン:この創師商会の本部があったのは当時中邑だったスウィズだったんだが、邑宰家長男のサイク・ルヴァログは親友ガズカの才幹に惚れ込んでおり、397年に政権を委譲した。同時にガズカは創師商会をライル社と改称し、今に見えるライル社が誕生したわけだ。だが……。
ナタケ:……お気になさらず、続けて下さい。
ハデン:わかった。これが彼の絶頂期だった。改称記念式典のその日、ガズカは暗殺されたのだ。黒幕はスウィズ邑の旧勢力。
ナタケ:私は三年かけてこれを完全排除しました。そして、今に至ります。


弐−大雑把だけど、組織

ナタケ:次に構成をご説明いたします。まず社長である私を頂点に、四つの部局に分かれております。

 外局:外交担当。局長はサイク・ルヴァログ。
 兵局:軍事担当。局長はディグ・カイル。
 治局:邑政全般を担当。局長はライル・カミナ。
 商局:経済活動や兵器生産を担当。他に、諜報活動も掌握している。
     局長はハウザー・カッシュ。
ハデン:まだ若い組織なので大雑把だ。運営は各局長の力量に拠るところが大きい。特殊なのは商局で、カッシュの裁量権が大幅に取られていて半独立状態だ。
ナタケ:ゆくゆくは「ライル社」の名を商局に移行し、統治機構と分離しようかと思っております(実現する前に死んじゃいますた)。


参−人、つーか四局長

ハデン:じゃ、次は各局長を紹介していこうか……。
ナタケ:ルヴァログさーん、出番ですよー。
ルヴァ:む、もうワシの番ですか……早いですの。お初にお目に掛かる、外局長サイク・ルヴァログでございます。
ハデン:いまいちパッとしないオッサンだよな。
ルヴァ:お黙り!ワシはとりあえず戦闘力を持たない普通の人間だぞ、君やカッシュ君のようなデタラメ人間と一緒にしないでもらいたい。
ナタケ:いえいえ、頼りにしておりますよ。とにかく目立ちたがりが多いというのに、ルヴァさんがいなければまとまりがつきませんよ〜。
ルヴァ:とまあ、こういう胃に負担をかける仕事が多いデス。これでも最古参なんだがのぅ……。
ハデン:有能に違いはない。でなければ難しい外交を任されることはないであろう。
ナタケ:目立たないけれど欠かすことのできない、いぶし銀ですね。
ルヴァ:社長も結構言いますナ……では仕事があるのでこのへんで。

ナタケ:お疲れさまでした〜。次の方、どうぞー。
カミナ:お待たせーっ。
ハデン:……嫌な女が来た。
カミナ:なによう。美人のお姉さんに対してそれはないんじゃないの?……と、私はライル・カミナ。ナタケちゃんの従姉よ。
ナタケ:すごく頭のいい人で、カミナさんがいなければ行政が止まるとさえ言われてます。
ハデン:酒臭いな。また飲んでたのか。
カミナ:アンタも飲む?
ハデン:いらん!とっとと行け!
カミナ:つれないわね……ま、後がつっかえてるみたいだし、いいわ。おーい、カイル!次はアンタよー!

カイル:……呼んだかカミナ。とと、ナタケ様にハデン殿、これは失礼……。
ハデン:唯一安心できる男が来た。
カイル:私の名はディグ・カイル。兵局長を拝命しております。以後お見知り置きを。
ハデン:彼は若いが(お前より年上だ)信頼できる武人だ。元は傭兵隊長だったが、スウィズに馳せ参じて以来、常に武勲をあげ続けている。軍編制にも気を遣っているし、人格者でもある。良将と呼ぶに相応しいぞ。
ナタケ:……ハデンさんがここまで人を誉めるところ、はじめて見ました。
カイル:恐縮です。卿もまた参謀として有能であると思う。
ハデン:そんなカイル殿、一体カミナのどこがそんなによかったのか……。
カイル:……。
ナタケ:あははーっ、社内恋愛大いに結構ですよー。ね、ハデンさん?
カイル:さて、お二方のお邪魔にならぬよう私はこれで……。
ハデン:ナタケ、何故そんな嬉しそうな顔をする。

カッシュ:相変わらず幸せそうじゃないか、ハデン君。
ハデン:……一番扱いに困る男が出た。
カッシュ:おっと申し遅れました。私はハウザー・カッシュ。商局長やってます。
ナタケ:ルヴァさんに継ぐ古参ですねー。お若いですけど。
ハデン:黒服を好むだけあって、いわく付きの男だ。本気で闘ったら俺より強いんじゃないのか?底が知れないな。
カッシュ:君に誉めてもらえるとは、光栄だね。
ハデン:ちなみに、四局長のウチ他は皆ナーラダ族。こいつだけナルスだ。
カッシュ:我々ナルスは情報戦に長けているのだよ。君も蜘蛛会の黒い噂は聞いたことがあるだろう?
ハデン:……お前自身は蜘蛛会には属していないがな。
カッシュ:さて、本当はもっと遊びたいだが、新型宝器の試験があるので失礼するよ。
ナタケ:宜しくお願いしますー。……さて、これで全員終わりましたね。
ハデン:なんだかよくわかりにくい紹介だが、誌面の都合でそろそろお暇するとしよう。
ナタケ:それでは失礼します。ありがとうございましたー。

ハクユウ:待たせたなお前等!オレサマこそナーズ・ハクユウ!天下無敵の剣豪だ!
………あれ?もう終わっちゃったの?
ハデン:ナタケ、もう帰ったぞ……俺は後片づけ中だ。
ハクユウ:コキ使われてんな。
ハデン:怒ると怖いんだよ……蛇に睨まれた蛙だよ。
ハクユウ:……。
ハデン:折角だからお前も紹介しておくか……こいつは俺の友人だ。一度闘りあって意気投合した。バカだが、いいヤツだ。
ハクユウ:ところでよ、前から疑問に思ってたんだが。……ナタケさんは社長で、お前はそれを補佐してるんだよな。何でお前、ナタケさんにタメ口きけるんだ?あの人が敬語なのはそういう性格だからってんで納得できるんだが。
ハデン:いい質問だ。……その、何だ、付き合い長いから今更話し方変えるってのもなところでよ、前から疑問に思ってたんだが。……ナタケさんは社長で、お前はそれを補佐してるんだよな。何でお前、ナタケさんにタメ口きけるんだ?あの人が敬語なのはそういう性格だからってんで納得できるんだが。……ナタケも今まで通りでいいと言うし。
ハクユウ:周りがそれについて何も言わねぇってのもスゲエな。
ハデン:ナタケ、あれでかなり人心掌握できてるからな……まあ、ここの雰囲気がそれを許容できるってのもあるみたいだが。それに、だ。
ハクユウ:ん?
ハデン:俺、書類上は社員じゃないぞ。
ハクユウ:そなの?
ハデン:ナタケに招聘されて助言してるって扱いっぽい……ま、なんだな。そこまで頼られてるなら、俺も命かけないとな。
ハクユウ:おうおう、ガンバレよ。オレも力貸すからよー。
ハデン:そうか、じゃあ手伝ってくれ。……まずはここの片づけを。
ハクユウ:……へいへい。おめえ、尽くすタイプだよな……。


 ※余談ですが翌年にナタケさんが病死しライル社は消滅、現在は存在しません。

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