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脚本:ザラス「霊珠」第2話『黄昏の帝国』第1.1稿

gyokuei
2005年03月04日 06:49 投稿

化けました。
既にプロットからも予告からも全然外れて暴走しています。でもこのほうが面白いからいいのです。そして、萌えます。なので、当初の設定もエピソードもどんどん変更してしまいました。描きたくてしょうがないかんじになってきました、300日祭に向けて、盛り上がって参りました!いい電波を受信しましたよ、えへへへへ。


次は絵コンテだー!

注! 思いっきりネタバレ含みますので、
アニメ作品だけ楽しみたい人は、読まないでください。

制作過程を楽しみたい人は、ぜひ、お読みください。↓




霊珠第2話「黄昏の帝国」


人物

ガル=イリル(20、男)天務卿の嫡男、霊珠を率いる「特務隊長」
トゥア(外見8、男)赤の霊珠
ルア(外見9、男)青の霊珠
ブロス=エクスタ(20、男)ガルの友人。マクエーク都護
ミィン=ラアト(19、女)ガルの従姉妹で幼なじみ。
シーリィ(不詳、10代前半、女)ハーリーティ・ミムに現れる謎の少女。
ヴィン(外見14、男)ヴィン=ヴィランのデータからつくられた複製知性体。
ユオザ=イリル、天務卿(41、男)ガルの父親

ラーン・ゴリウス(23、男)独立軍の兵。メール族一の戦士。
ユード・ナティ(24、女)独立軍の兵。ツァン族一の戦士。神官。
ラーン・シェリカ(13、女)通称シェシェ。ゴリウスの血のつながらない妹。精霊使い。


{その他}
軍人C(若い男)
軍人D(男)
ジルの幻影(4)
帝国軍兵士たち

{過去のシーンで登場}
カナ=エクスタ、前封務卿(16、女)
アフネリア邦王セラド=アフヌマ(35、男)
前治務卿(52、男)今の治務卿の伯父。
トェマン=タウア、炎務卿(32、男)チェリア朝アフネリア支軍統帥
キデス=ヴィラン、仁務卿(32、男)アフネリア軍学校校長。人事担当
ユオザ=イリル、天務卿(21、男)ガルの父親
赤子のガル
赤子のブロス
幼い頃のガル(7)
幼い頃のブロス(7)
ガル・ブロスの同級生たち(7)




◆アバンタイトル


○邦都スイモミスク天守内部。20年前
天守地下牢。
投獄されるカナ。手足には鉄の枷。
重い音を立てて、帝国の紋のはいった鉄格子が落ちる。
座るカナの姿、闇の中に浮かび上がる。
  ×  ×  ×
M 天命不可逆
七家議の議場。
カナの映像の映し出された壁を見ながら、会議中。
席にいるのは、
邦王、前治務卿、炎務卿、仁務卿、天務卿の5人。
封務と功務の席は空席になっている。
前治務卿「我らがこれを放置しては、七家議として示しがつきませぬ。極刑に」
炎務卿「そうは言われるが、封務は残りわずか2名。功務の時の二の舞だけは、避けねばなりますまい」
仁務卿「さよう。極刑は避けられぬといえ、例の計画への協力を……」
と、他の七家議が話し合っている中、映像を食い入るように見つめる天務卿。
映像切り替わり、赤子の養育室。筒状の寐床(ペーレ)の中に入った、ガルやその他言霊人の子供たち。
天務卿「君がどうしてこんなことを…カナ!」
一番奥に、筒の外に出され、布のようなものにくるまれた赤子ブロス。

 
○軍学校幼年部の教室。13年ほど前
軍学校幼年部の教室。
こどもの唱和「半蛮族、半蛮族、半蛮族!」
こども「なあ、何でおまえ、こんなとこにいるんだ?」
こども「ここは言霊人(イシス)の学校なんだぜ?」
こども「半蛮族で汚していいとこじゃないんだよ」
こども「みろよ、この髪、ありえない色だよなー」
こども「なあ、蛮族って、殺しても死なないらしいよ?」
こども「このくらいじゃ、きっと痛くもないよな。ほれほれ」
殴ったり蹴ったりやりたい放題。幼ブロス、なすがままにうずくまる。
と、
幼ガル「やめないか」
声とともに、ぱあっと光がさす。おずおずと見上げる幼ブロス。とまどうこどもたち。
こども「純血のイシス──」
こども「天務の──」
幼ガル、光をバックに。
幼ガル「力に訴えるのは、君たちの嫌いな蛮族のやりかただ。ちがうのか?」
はっとするいじめっ子たち、すごすご去る。
そのまま立ち去る幼ガル。憧憬のまなざしで見送る幼ブロス。
幼ブロス「あれが…純血のイシス……」


○マクエークの塔の一室。現在(1話の4年後)
明け方。微妙な曇り空。
ブロス、目を覚ます。汗を拭い、起きあがる。頭をかいて苦笑。
ブロス「らしくねーな。もうすぐ会えるからか……」
窓へ歩み寄り、廊下に目をやる。
階段側、ブロスの居る部屋の扉の外にいる兵たちの会話が風に乗って聞こえてくる。
軍人C「ですから、ただの榻(ながいす)では充分な休息はとれません。節下(せっか)に私の寐床(ペーレ)を使っていただこうと思って……」
軍人D「……そうか、お前、知らないのか?」
軍人C「は……?」
軍人D「あの方は俺たちとは違う。半蛮族だからな」
軍人C「では……噂は、本当だったのですか」
軍人D「寐床でやすまなくても生きていける、あの方は、半分バケモノさ」
そこへ扉を開けて現れるブロス。居心地悪げにもぞもぞする二人に、ブロス声をかける。
ブロス「気にすることはない。本当のことだからな」
軍人C・D「し、失礼をいたしましたっ」
ブロス「そうだ。だがそれでも俺は……」
ブロス、決然と顔を上げ、言い聞かせるように呟く。
ブロス「帝国の、軍人だ」



◆OP



◆Aパート


○マクエークの城門
M 穏やかな日々
明け方。マクエーク城内に歩いて入ってくるガル、トゥア、ルア。
窓から下を見ていたブロス、気づいて迎えに行く=窓際を離れる。
ガルの後ろについて歩いていた二人、ガルに話しかける。
ルア「マクエーク都護、ブロス=エクスタ、20歳。正確には20歳4節(つき)10日──隊長殿と同年ですが、数日遅い生まれですね」
ガル「背は俺より高いぞ。もっと差がついてるかも」
トゥア「隊長、お知り合いなんですか?」
ガル嬉しそうに頷いて。
ガル「軍学校時代、俺と首席を競い合った仲だ。卒業以来だな……」


○マクエーク司令室
朝。壁にカナの写真が飾ってある。

ガルとブロス、二人同時に部屋に踏み込み、目を交わしあう。ブロス、軍章を投げる。受け止めると同時に、ガル、
ガル「表」
ブロス「ん……表。負けたな。俺の136勝、31敗だ」
ガル「ええっ?32敗じゃなかったか?」
見合って笑うガルとブロス、顔を見合わせるルアとトゥア。
  ×  ×  ×
ブロス、ルアとトゥアを見ながら。
ブロス「特務隊長……か。凄いな。さすが、俺達の誇り、次期天務卿だ」
ガル「君だって、都護だろ。軍では、同格だ」
ブロス、首を横に振る。
ブロス「俺は違う。俺がマクエークの都護になったのは……」
司令室中央、紋の上で消えていくヴィンのイメージ。嘆く天務、それを横で見ているブロス。
暗澹とうつむく二人。窓から見える空は黄昏色。雲が流れ日を隠す。
  ×  ×  ×
ブロス顔を上げ、つとめて明るく笑う。地図を示し、
ブロス「でも、来てくれて良かった。明日、ティエルダタンの奪還にかかるつもりだ」
ガル「もちろん、協力する。作戦が成功すれば、湖西地区の圏はぜんぶ……」
ブロス「うん。こっちに取り返せる」
笑顔のガルとブロス、しかし、
ルア「待ってください」
割り込むルア。ブロス、なんだこいつ無礼な奴だな、という表情。ルア、地図を見ながら。
ルア「ティエルダタンまでの距離は、五百ラウ(距離の単位)を超えていると思いますが……」
ブロス「六百二十ラウだが?」
トゥア「それでは、僕らに声が届かない」
ブロス「何の話だ?」
怪訝な表情のブロスに、ガルが説明する。
ガル「霊珠のコマンド発行の有効距離は、五百ラウまでなんだ。それ以上離れると、俺の指令が効かない」
ブロス「じゃあ、ガルも行けばいいじゃないか」
ルア・トゥア「ええええーーーーーーーー!?」
ルアは驚き、トゥアは不満の声。しかし驚くのはブロスの方。ガルに向き直る。
ブロス「ひょっとして、戦場に出たことが一度もないのか!?」
頷くガル。(゚Д゚)ハァ? な表情をするブロス。
ガル「霊珠の指揮には潜航並みの集中が必要なんだよ」
ブロス「そうか、凄い兵器だと聞いてたんだが、案外無能なんだな、こいつら」
とげのある言い方に、トゥア、むっと口をふくらませるが、ルアが制止。ガル溜息。
ガル「わかった。一度くらい、俺も出るよ」
トゥア「隊長!」
トゥア抗議するが、ガル笑う。ブロス、ガルの肩を叩き、
ブロス「じゃ、頼んだぞ、ガル」


○戦場。夜。ティエルダタン寄りの場所。
トゥアとルアは陣頭に配置されている。まだ通常モード。
遠巻きに眺める帝国兵とブロス。
トゥアつぶやく。
トゥア「隊長、大丈夫かなあ……」
  ×  ×  ×
ガル、腰の剣を叩きながら笑って、
ガル「心配するな。ブロスほどじゃないけど、剣だって使える」
  ×  ×  ×
ルア、頷くが、表情を引き締め、
ルア「我らの任務を忘れるな、トゥア」
そこへ、ポーン、とガルからの指令が着信。トゥア、ルア、二人同時に耳に手をやる。耳の中に響くように、ガルの声。
ガル「トゥア、ルア。視覚情報を接続する。コード『イシャーナ』、発動」
姿勢を正すトゥアとルア。
トゥア「『イシャーナ1』了解」
ルア「『イシャーナ2』了解」
コード『イシャーナ』はルアとトゥアの見ているものがガルにも見えるようになるコマンド。トゥアとルアの髪がなびき、両目をノイズ状の光が走る。二人の変化に気づき、ブロス歩み寄る。
ブロス「霊珠。出撃できるのか」
トゥアは口をふくらませて無視。ルアはふりかえり、偉そうに。
ルア「いつでも」
ガルの目に映るブロスの姿。
ガル「トゥア、ルア。コード『アシュラ』発動」
コード『アシュラ』は戦闘モードコマンド。トゥアとルア、光に包まれ、戦闘モードに変身。
帝国兵「おおおおおっ!」
と、どよめき。
ブロス、手を挙げ、指令。
ブロス「出撃!」
揃って早足で軍隊歩きする帝国兵たちと、その前をすべるように走ってゆくトゥアとルア。


○戦場。夜。ティエルダタンからちょっと離れた丘。
丘の上に立っているガル。
背後の茂みが怪しい動き。ガル気づかない。
ガル、手をのばし踊るような動作。うしろからだと何もないのに空気キーボードやってる怪しい人だが、前から見ると、光の網のようなものに囲まれ、ガルの目に映像と文字情報が映り込んでいるのがわかる。額の宝石チカチカ光る。
ガル「トゥア、針路修正……と」
トゥアの、指令へのすばやい反応に満足げなガル。
×  ×  ×
そのとき背後から風が。髪前になびく。
ガル、はっとして振り返る。
その瞬間、ガルの鎖骨の下あたりを貫く剣。
ガル「く……っ」
ガル、視線を剣身から剣を握る人物へ。腕輪光る。月をバックに剣を差しのばしているゴリウスのシルエット、ブロスそっくり。
ガル「ブロス!?……違う!」
ガル、右手を腰の剣に伸ばし、
ガル「『レイア』」
呟くと剣の柄から光の刃が出てゴリウスの剣とぶつかる。ゴリウスの剣は邪悪そうな赤いオーラをまとっている。
ゴリウス「帝国兵だな。ここで何をしてた」
言葉と共に影動いて顔半分見える。やっぱりブロスそっくりだが髪の色が赤。
ガル「……蛮族」
ガルとびすさり、剣身を肩から抜く。抜ける瞬間剣身ねじれて血飛沫が飛ぶ。かなり痛い。
ガル「『ゴール』……『アンシュ』」
ゴールは痛み止め、アンシュは服の再生。傷口かくれる。とたん、襲いかかるゴリウスの剣。とびすさり、二人、間合いをうかがう。
ガル「闇討ちとは、蛮族らしい……」
ゴリウス鼻で笑う。
ゴリウス「へっ、おおかた、ティエルダタンをのぞき見だろがよ。蛮族と言うが、どっちが姑息だ?」
ガル「……貴様の名は」
ガル、つとめてクールに。顔を上げ、キャラを作っている。その実は、トゥアとルアが来るまでの時間稼ぎのつもりで。
ガル「名は何という。俺も剣は苦手じゃない」
ゴリウス「今更正々堂々を気取るのか?」
ガル「純血のイシスを見るのは初めてか、蛮族。次期天務卿、ガル=イリルが相手をしてやると言ってるんだ」
ゴリウス「次期天務……だと?」
不敵な笑いを浮かべるゴリウス。
ゴリウス「雑魚かと思えば、大将首とはな。……メール一の戦士、ラーン・ゴリウス、参る!」
ガル「ゴリウス……やっぱり、ブロスじゃない」
ガルが呟く間に、ゴリウスの斬撃。激しく撃ちあいながら。
ガル「(トゥア…ルア…気づいてくれ)」


○戦場。夜。ティエルダタンの城壁が見える場所。
突然立ち止まるトゥアとルア。
ブロスあわてて軍を止める。
ブロス「どうした」
トゥアとルアはブロスの声は聞いていない。互いの瞳を見合って。
ルア「コード『イシャーナ』が、消えた……」
トゥア「隊長が危ない!」
頷きあい、一目散にガルの居る丘に向けて走り去ってしまう。
ブロス「おい!霊珠!作戦は……」
言葉が耳に入っていようはずもなく。
ひゅるるるる、と冷たい風が吹き抜ける。呆然とするブロスと帝国兵たち。
軍人C「節下、いかがいたしますか?」
ブロス、溜息をついて。
ブロス「護衛くらいつけるべきだったな。買いかぶりすぎた、俺の落ち度だ。追うぞ!」
全軍方向を変え進軍再開。ブロス、霊珠が去っていった方を見て、呟く。
ブロス「しかし……あれが本当に、兵器といえるのか?」


○ガルのいる丘。
つづく剣撃。しかし、ガルはそろそろ限界。唇をかみしめ、流れる冷たい汗。ふらつく足、息が乱れている。
ゴリウス「……ん?」
それに気づいたゴリウス、怪訝な表情。ガル、同情されたと思いカッとする。剣の光の幅を最大にしてゴリウスの剣をはねのけるが、その衝撃で傷が破れる。
ガル「う……」
膝が崩れ、剣を突き立て、左手を突く。袖口から流れ落ち、地面にしみこむ大量の血。
ゴリウス「そういうことか……致命傷だと思ったが……」
哀れむような声に、ガル、顔を上げて睨みつける。
剣を突きつけながらも、穏やかな声を出すゴリウス。ガルは視界が揺れて、動けない。
ゴリウス「てめえには、恨みはねぇがな……五種の民と、おれの部族の未来のためだ。悪く思うなよ」
×  ×  ×
ゴリウスが、剣をふりかぶったとき。
ゴリウスの背後から迫る炎。
ゴリウス「のわっ」
辛うじて直撃は避けたものの、大やけど、衣服にも火。転がって炎を消すゴリウス。
トゥア「ぼくらの隊長を……許せない!」
怒りのオーラを放ちながら炎の中に現れるトゥア。掌から炎の鞭を放つが、ゴリウスはなんとかかわしつつ逃げる。
ルア「トゥア、むちゃくちゃだ!これでは隊長殿まで……」
というルア、冷気の壁で炎を防ぎながら、膝をつき、ガルを抱きかかえている。冷気の壁ひろがり炎を消す。トゥア追撃をやめ、泣きながら駆けより、ガルの顔をのぞきこむ。
ルア「隊長殿、しっかりしてください」
トゥア「隊長、隊長……っ」
ゆっくり瞼をもちあげるガル、しかし彼の目に映っているのは、トゥアではなく、かつて亡くした弟、ジルの姿。
ジル「兄上……っ」
ガル、かすかに笑い、瞼を閉じる。がくり。




◆Bパート


○ハーリーティ・ミムの中。
黄色く光る液体。さざなみのように揺れる。
その中を、ゆっくりと沈む人影。
  ×  ×  ×
黄色い光の珠が一つ。その珠から、ガルの声。
ガル「ここは……どこだ」
ガル「いったい……どうなってる」
ガル「この光は……?」
  ×  ×  ×
シーリィ「あなたは、誰」
声に振り返ると、シーリィの姿。
ガル「君は……シーリィ」
シーリィ「おしえて。あなたのなまえ」
ガル「俺の名前は、もう登録したはずだ」
シーリィ「いいえ。あなたのなまえは、ありません」
ガル「……?」
やや沈黙あって、
ガル「まあいい。俺の名前は、ガル=イリルだ」
シーリィ「あなたのなまえは、ガル=イリル。登録します」
登録、の文字浮かぶが、止まる。
シーリィ「上書きします。ほんとうに、よろしいですか?」
ガル深く考えずに、
ガル「ん?……ああ」
チリーン、と、登録音。
黄色の光の珠からにじみ出るように、ガル(精神体)の姿現れる。
ガル「シーリィ……?」
シーリィ「泣いている」
シーリィ上を指さす。
シーリィ「……が、泣いている……」
言葉とともに、上から白い光に塗りつぶされるイメージ。ホワイトアウト。

○マクエーク城内、将官用の特別看護室。
戦闘の数日後。治療用の寐床=ペーレの中で目を覚ますガル。窓越しにミィンの顔がのぞく。
ミィン「ガル、気がついた?」
ガル「……?」
ガル、視線を転じると、トゥアとルアが目に入る。
ガル「俺は…生きているのか……?」
トゥア「隊長っ……ほんとに、よかった……」
ガル「ルア、戦況は……」
と、ミィンを無視して話をすすめる3人、その間に寐床の窓をあけるミィン。
ミィン「ガル……」
ガル、初めてミィンに目をとめて。
ガル「きみは……?」
不思議そうに言うガルに、ミィンの表情くもる。
ミィン「本当に……覚えてないの……?」
しかし振り切るように。
ミィン「私、ミィンよ。ミィン=ラアト。看護士よ」
そして小声で、
ミィン「ガルに、会いたかったから……」
涙がこぼれそうになり、身体ごと顔をそむける。つとめて明るい声で、
ミィン「もう、大丈夫ね。何かあったら、知らせてね」
トゥアとルアに言って部屋を出る。トゥアはガルの方を見ていて気づかないが、ルアはミィンの様子がおかしいのに気づき、怪訝そうに見送る。
  ×  ×  ×
部屋の外。扉が閉まったとたん、扉にもたれて座り込むミィン。
ミィン「ガル……!」
床についた手、涙のしずくがぽたぽたと落ちる。しかし、
ミィン「……しっかりしなきゃ、わたし」
ミィン、ぎゅっと手を握って、嗚咽を耐える。


○ティエルダタン城内、昼。
ブロス、ティエルダタン奪還を完了しあとは司令室を改めるのみというところ。部下の報告を受けている。
ブロス「ガルが、目を覚ました?そうか」
ほっとした表情で頷いていると、司令室に入った兵が激しく咳やくしゃみをしながら飛び出してくる。
ブロス「どうした」
げふんげふんと、言葉が出ない兵たち。かろうじて部屋の中を指さす。ブロスが扉をあけて中に入ると、美しい花が花瓶に生けてある。
ブロス「毒か?」
ブロスは半蛮族なので平気。つかつかと入っていき、窓から花瓶を投げ捨てる。
風に舞いおどる花びらに、ブロスの声がかぶる。
ブロス「蛮族らしい、姑息な手を……」


○ティエルダタン近郊の独立軍の拠点。仮の宿の一つ。
ブロスが投げ捨てたと同じ花が生けてある、粗末な部屋。
アシュラ神の小さな像や薬草の鉢、包帯などが積んであり雑然としている。
包帯でぐるぐる巻きになったゴリウス、粗末なベッドに寝ている。
目を覚ますが、過剰包装気味なので動けずもぞもぞする。
目まで包帯で覆われているので、手をのばしてはがす。不機嫌そうな表情。
部屋にいたナティ、気づく。いきなり罵声。
ナティ「馬鹿なひとね。純血のイシスと、真っ向勝負ですって?呆れた」
ゴリウス、口がまだ包帯に包まれているので、言いづらそうにもぞもぞしながら。
ゴリウス「一応、背後から闇討ちはしたんだが」
ナティ「どうかしら。私がいなければあなた、今頃立派な焼き豚よ。気をつけることね」
ゴリウス、頷いて聞き流しながら、包帯をほどく。手を見て、
ゴリウス「あ、治ってる」
と呟く。ついで首から上をほどく。のぞく赤い髪。
  ×  ×  ×
ふと思い出したようにゴリウス、自分の顔を指さしながら、
ゴリウス「なあナティ、この顔、帝国に居ると思うか?」
ナティ振り返り、気の毒な人を見るような顔でまじまじと見つめるが、指さしつつ、
ナティ「典型的な山男顔。ありえない」
ゴリウス「……だよなぁ」
 ×  ×  ×
ガルと対峙したときの回想。
ガル「ブロス……?」
 ×  ×  ×
ゴリウス「じゃああいつ、俺を誰と間違えたんだ?」
考え込むが、やがてベッドにごろんと転がって。
ゴリウス「ま、いいか、どうせもう死んだだろ……」


○邦都スイモミスクの情報管理室。
流れ落ちる光の中に手をかざし、情報を読みとっているヴィン。
振り返ると、天務卿が足早に歩いてくる。
天務卿「ガルは……ガルは、無事なのか!?」
ヴィン、光の方に顔を向ける。間があって、
ヴィン「……一命をとりとめたようです」
天務卿の顔明るくなり、ほっとしたように溜息。
天務卿「ありがとう、ヴィン君」
そのまま立ち去る天務卿。
 ×  ×  ×
ヴィン、天務卿の<ヴィン君>のセリフに微妙な動き。
ヴィン「私はヴィン、では、ない……」
 ×  ×  ×
回想。マクエーク自爆。
 ×  ×  ×
ヴィン「ヴィンは、たしかに、あの時死んだ……」
 ×  ×  ×
涙するヴィン、手を伸ばす天務。
シーリィに掬われる、紫の珠。
 ×  ×  ×
ヴィン「天務卿、あなたは何を考えている……?」
鏡の映り込みのように、光の中にヴィンを向いて浮かぶ、紫のシーリィ。


○戦場。ティエルダタン近郊の草原。昼。
時間経過している。二週間後ぐらい。
草原に立つガル、トゥア、ルア。心配そうにうろうろするトゥアと、油断なく目を光らせるルア。ガル苦笑する。
ガル「大丈夫だ。今日は昼だし、それに…」
 ×  ×  ×
月をバックに立つゴリウスのシルエット。
 ×  ×  ×
ガル「……いや」
と、口ごもる。
 ×  ×  ×
草原の向こう側から、かさかさと軽やかに草を踏みながら現れる旅装の少女、シェシェ。
シェシェ「おにいさま、おにいさま、……どちらに行かれたのかなぁ」
人を探している。回りを見回しながら近づく。
 ×  ×  ×
ガルたちとはちあわせ、目が合う。ガルの服から帝国兵であることに気づき、怯えた表情をうかべる。
ガル「……!?」
ガル、シェシェがジルとかぶって見え、呆然と立ちすくむ。
シェシェ、くるりと背を向けて逃げ出す。
トゥア「隊長!」
トゥア、ガルに声をかけるが、ガル言葉が返せない。
遠ざかってゆくシェシェの姿、林の中に消える。
ルア「追いますか?」
ガル「いや……」
と言いかけて、ガル気づく。
ガル「あっちは、ブロスの本隊が」
ガル、はじかれたように走り出す。トゥア、ルア、顔を見合わせ、ガルの後について走る。
 ×  ×  ×
ガルたちが追いつくと、シェシェは既に本隊の一部に囲まれている。
じりじりと包囲を狭める帝国軍兵士、怯えつつも、背中に隠した手でそっと印を切るシェシェ。
兵からの報告でこちらへ向かうブロス。
ガル「やめろ!」
そこへ飛び出す、ガル。
帝国兵「な……」
帝国兵「特務隊長殿……?」
帝国兵「ガル様……」
呆気にとられる帝国兵達。と同時に、
シェシェ「えっ……?」
シェシェも意外な成り行きに目を丸くする。
凍り付く空気の中、ガル、ブロスと向かい合う。
ブロス「なぜ、庇う?それは蛮族なんだぞ!」
蛮族、の言葉にガル振り向くが、ガルに見えるのはジルの姿。
ガル、大きくかぶりを振って、その幻影を振り払おうとする。ブロス、重ねて言う。
ブロス「俺達の敵だ。分からない君じゃないだろう」
ガル「俺は……」
ガル、激しく混乱。
そんな会話がなされている隙にしっかりと逃げているシェシェ。ブロス、それに気づくが、追う気もなくして愕然と呟く。
ブロス「なぜ、庇う。純血のイシスである、君が……!」
ブロス、視線をガルから二体の霊珠へ。
トゥアとルア、心配そうにガルを見る。微笑み返すガルに、寒気を覚えるブロス。
ブロス「ガル…君は、ひょっとして、霊珠に……」

→ed

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